Project/Area Number |
21K13173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University (2023) Toyo Gakuen University (2021-2022) |
Principal Investigator |
玉井 隆 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (40845129)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | ナイジェリア / 暴力 / ケア / アフリカ / 精神医療 / 生の人類学 / 施設 / 家族 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、アフリカ都市社会における「遺棄(abandon)された人びと」の「生(life)」に関する民族誌的研究である。「遺棄された人びと」とは、社会的に周縁化され、行き場を失い、路上で生活をしたり、宗教・医療施設に収容されたりする人びとを指す。調査対象は西アフリカに位置するナイジェリア最大都市であり、人口約2,000万を抱えるラゴスにある国立精神神経病院である。具体的には、家族、医療、国家といった制度の絡み合いのなかで、彼らはなぜ社会的に遺棄されるに至るのか、また彼ら自身の感情や思考、行動、想像力に着目し、システムや制度を越えた彼らの「生」を描き出すことを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究における主要な概念であるケアと暴力についての論文をそれぞれ発表した。 1つ目は、ケア概念を用いた公衆衛生課題の検討として、ポリオワクチン接種をめぐる政治力学を検討した。着目したのは、国際社会の支援のもとで行われたナイジェリアのポリオ対策が、その本来の目的であるワクチン接種を推進したことに加えて、ローカル社会の人びとに対するケアを拡充させる効果を生んだ点である。ここでのケアは家庭や病院内に限定されず、ローカルレベルでの対面的な関係において、相手のニーズに関心を向け、配慮し、具体的な行動をとる一連のプロセスを指す。同論文ではそうしたケア活動をポリオ根絶のための手段ではなく、ナイジェリアにおけるケアの環境をよりよく改変させる効果を生むものとして再評価することを企図した。 2つ目は、本研究が対象とする「遺棄された人々」が置かれている政治・社会状況についての検討として、ナイジェリア政治に対して失望する若者に焦点を当てた検討を行った。近年多くのメディアが若者を対象とした記事を多く発信している。その背景には、例えば警察による市民に対する暴力への抗議運動、大統領選挙での特定候補者への支持運動等がある。いずれの運動も一定の成果を上げている。そのため既存の研究はこれらの運動について、若者による民族・宗教・地域に捉われない市民的価値を共有した政治的活動の現れとして肯定的に評価した。これに対して同論文では、フィールド調査に基づき、ナイジェリア政治に失望する若者の存在を明らかにしている。分析の結果、若者の失望の背景には(1)ソーシャルメディアを駆使しようとも、植民地期の性格を引き継ぐポストコロニアル国家としてのナイジェリアにおいて、機能不全となった国家の構造に変化を迫ることはできないこと、そして(2)腐敗権力が作動する暴力と混乱に満ちた日常を生きざるを得ないことがあることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は「3: やや遅れている」であったが、その遅れを取り戻すことができた。研究成果については、昨年度と異なり査読論文2本を発表することができた。またフィールド調査については、ナイジェリア国内における治安機関による暴力について調査するために、ナイジェリアの調査補助者とも協議を重ねながら、暴力被害にあった人物への現地での聞き取りを行うことができた。同調査対象となった人物らは、昨年度に聞き取りを行った人物も含まれており、その後の生活状況の改善状況等についても詳細に聞き取ることができ、また関係性のよりよい構築ができた。さらに現地では複数の弁護士を紹介され面会し、調査協力について快諾を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は以下3点を実施することとする。 (1)引き続きナイジェリアにおけるフィールド調査を可能な限り長く実施し、調査データの収集・分析を行う。特に治安機関による暴力被害にあった人々に対する更なるインタビュー調査によるデータ収集、また彼らを支援するNGO等の団体での参与観察と聞き取りが主となる。23年度に紹介を受けた弁護士を通じて、暴力被害者の精神保健や社会復帰にかかわる支援を行っているNGO等で調査を行う予定である。(2)24年度はこれらのデータ分析を進め、英文を含めた論文執筆を行う。(3)暴力、ケア、レジリエンス等に関する文献レビューを引き続き行う。
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