Project/Area Number |
21K13234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
岡田 拓也 大東文化大学, 法学部, 准教授 (20846646)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | ロック / ホッブズ / 寛容 |
Outline of Research at the Start |
宗教対立の激しい17世紀イギリスにおいて、ジョン・ロックは『寛容書簡』(1685)で異なる宗教間の寛容を説いた。このようなロックの寛容論は日本の憲法にまで影響が及ぶ。若い頃のロックは寛容に懐疑的であり、考察を深める中で徐々に寛容支持へと立場を変えていった。では、今日にまで射程の及ぶような寛容論にロックはいかにして到達したのか。本研究は、17世紀後半のイングランドにおける寛容論争の発展を念頭に置きながら、ロックの寛容論発展の背景を明らかにする。その際に、1660年前のピューリタン革命期の寛容論争やホッブズの『リヴァイアサン』(1651)を視野に入れる。
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Outline of Annual Research Achievements |
公表に至るような成果としては、まず、ホッブズに関して書評を二つ執筆した。これは今年中に公表される予定である、また、下記のロック研究に関して研究会で研究発表を行った。 次に研究の中心的な課題であるロックの寛容論に関しては、昨年度中に執筆した原稿を学術誌に投稿し、査読者から得たコメントを基に原稿を大きく改訂する作業を行った。現在は論文のテーマを少し変え、初期ロックが執筆した『世俗権力二論』に見られるホッブズの影響を同時代の脈絡の中に位置付けることでその意義を探るというテーマの論文を執筆している。現在はこの改訂作業をほぼ終えた段階である。これまで初期ロックへのホッブズの影響を同時代の脈絡の中に位置付ける際には、ロックが所属したオックスフォード大学でのホッブズの影響を中心に議論されることが多かった。それに対して本稿は視点を広げ、ピューリタン革命期の寛容論争におけるピューリタンの著作家および王党派側の寛容論者であるジェレミー・テイラーの議論を背景にして初期ロックとホッブズの共通点がいかなる意味を持つのかを検討した。また、王政復古期にホッブズの影響を受けた著作家として知られるエドワード・スティリングフリートとサミュエル・パーカ―との比較も行った。この作業により、1660年代前半から1660年代後半にかけてのロックの寛容を巡る見解の変化についても理解が深まったと考えられる。今後はこの改訂原稿を再び投稿していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
普段集中して研究を行う時期である冬の時期は、家庭の事情や3月からのイギリスでの在外研究の準備のため思ったように研究を進めることは出来なかった。しかし他面で在外研究を始めてからは研究に専念できる環境があり、これまでの遅れを取り戻すことが出来ている。在外研究は1年間あるため、この間に大きく研究を進められることが期待できる。 博士論文の執筆後これまで、どちらかと言えば個別の論文規模のテーマに力を注いできた。これには、ちょうど自分が取り組もうとしてきた研究課題に関して重要な研究書が公表されたため、軌道修正を余儀なくされたという事情もある。しかし研究を進める中で、ロックの寛容論についても規模の大きな研究課題がようやく明確に見えてきた。これにより今後の方針がより明確に見えてきた。 そのテーマ・研究課題とは、ロックの寛容論と彼の宗教観の発展を、同時代の寛容論と宗教観の変化・発展と関連付けて捉えるというものである。17世紀イングランドでは宗教は信仰の問題と同時に国家の法に関わる問題とも捉えられてきた。しかし宗教が国家の法として捉えられる限り、寛容は成り立ちえない。他面で宗教戦争が起きた17世紀では、宗教が濫用される危険性も強く意識されていた。それではどのようなものとして宗教を認識すれば、寛容を実現できるとともに宗教が濫用されずに済むのか。ロックはこのような課題に取り組んでいき、宗教とは何かというテーマに関して議論を深めていったと考えられる。このロックの議論の深まりを、同時代の議論と関連付けて捉えていくのが今後の研究課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
既述の通り、今後はロックの寛容論の発展を彼の宗教観の発展と関連付けながら捉え、これを同時代の脈絡の中で理解していく予定である。 さしあたりロックのテキストを中心に彼の議論の変遷を整理してまとめることを考えている。これが適正な規模であれば一つの論文としてまとめる可能性についても考えている。初期ロックの『世俗権力二論』から初め、1660年代後半の『寛容論』、1680年代初期の重要な草稿『エドワード・スティリングフリート論』、最後に名著として知られる『寛容書簡』を扱うというものである。これまでの研究で、それぞれロックの宗教観に重要な発展があったという目途がついているので、これを具体化していきたい。 他面で、時代ごとにロックと彼の同時代人の議論との関連性を探る作業も出来るだけ行っていきたい。さしあたり目をつけているのは1660年代後半、とりわけサミュエル・パーカーの著作発表前後の寛容を巡る議論である。パーカーについては昨年度に改訂した投稿論文の原稿でも触れてきたが、ロックの議論の発展を理解するのに重要であるという感触を得ている。パーカーの議論と同時代の寛容論争における他の論者の議論の関係をより深く探っていくことで、この感触の当否を検証していきたい。ロックが1660年代後半に執筆した『寛容論』の背景についてはまだ不明だとされていることが多いが、今回の研究により多少なりとも『寛容論』執筆の背景とロックが寛容に関して意見を変えた理由について理解を深めていきたい。
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