強力な生物攪拌者に着目した順応的管理の実践的研究~ニホンスナモグリは悪者か?~
Project/Area Number |
21K14279
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 22060:Environmental systems for civil engineering-related
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
東 和之 阿南工業高等専門学校, 技術部, 技術専門職員 (40623260)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 人工海浜 / 生物攪拌 / ニホンスナモグリ / ホソウミニナ / 重金属 / 野外実験 / 順応的管理 / 人工干潟 |
Outline of Research at the Start |
強力な生物攪拌者であり,干潟生態系に大きな影響を与える生態系エンジニアとして知られるニホンスナモグリに着目し,徳島市の沖洲人工海浜をメインフィールドとして以下の研究を行う.①底生生物相および物理環境調査の実施.②沖洲人工海浜以外のスナモグリ生息干潟において,底生生物および物理環境調査の実施.③スナモグリの生物攪拌量の定量化およびその影響の評価.④順応的管理として,スナモグリの生息域管理の検討.これらにより,スナモグリ生息干潟の底生生物群集の形成メカニズムを明らかにし,順応的管理による底生生物相の管理を目指すことで,生物多様性豊かな人工干潟造成のための手法を確立する事が目的である.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ニホンスナモグリ(以下スナモグリ)の生物撹拌が海浜環境に与える影響を明らかにするために,スナモグリが優占する海浜(人工海浜)およびスナモグリが存在しない海浜(既存海浜)で調査を実施した.両海浜において,海浜表層(0-5 cm)および深層(25-30 cm)の底質をコア採取し,分析に供した.分析項目は強熱減量,粒度組成(シルトクレイ率)および重金属(銅,鉄,亜鉛およびマンガン)であった.加えて両海浜で底生生物の定量調査も実施した. スナモグリが存在する人工海浜では,強熱減量,シルトクレイ率および重金属濃度は,深層の方がいずれも低い傾向があったが,有意差は認められなかった(t-test, p=N.S.).既存海浜では強熱減量および重金属濃度は,実験区と同様に表層と深層の間に有意差は認められなかったが(t-test, p=N.S.),シルトクレイ率のみ深層が有意に高い結果となった(t-test, p<0.05). 既存海浜の優占種はホソウミニナであり,確認された173個体中90%を占めていた.その他はアサリ等の二枚貝などが確認されたが,スナモグリは1個体も確認されなかった.人工海浜では合計54個体の底生生物が確認された.そのうちスナモグリが37.0%を占めており優占種であった.次に多く見られたのはトリウミアカイソモドキで27.8 %であった.ホソウミニナは11.1%であった.このように,既存海浜の圧倒的優占種であるホソウミニナが,隣接する人工海浜ではあまり確認できなかった.この理由として,人工海浜の優占種スナモグリの生物撹拌による影響が考えられる.人工海浜における9つの調査地点のうち,ホソウミニナが確認された地点ではスナモグリが確認されなかった.逆に,特にスナモグリが高密度で存在している調査ライン(3つの調査地点を含む)では,ホソウミニナは1個体も確認されなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査は予定通り進めることができ,データを取得することができた. 海浜底質の微量元素分析も予定通り実施することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
人工海浜にホソウミニナが少ない理由について,ニホンスナモグリの生物撹拌と底質中の重金属濃度から検証を実施する.主に1:人工海浜と既存海浜の底質中の重金属濃度の比較,2:ホソウミニナ体内の重金属濃度の比較および3:ホソウミニナの野外飼育実験の3点について研究を行う. 1:は,人工海浜と既存海浜において表層1 cmの底質を採取し,底質調査方法(環境省)に則り前処理を実施したのち,ICP発光分光分析装置を用いて重金属濃度を定量化し,比較を行う.重金属濃度に加えて,強熱減量や含水比,粒度組成など,底質の物理化学特性についてもデータを取得し,それぞれの関係についても考察を行う. 2:は,人工海浜および既存海浜においてホソウミニナを採取し,軟体部を乾燥後に粉砕し前処理を実施,その後ICP発光分光分析装置を用いて重金属濃度を定量化する.底質中の重金属濃度と比較することで,ホソウミニナが選択的に蓄積しやすい重金属を明らかにし,ホソウミニナの定着に特に問題があると考えられる重金属を特定する. 3:は,ホソウミニナの定着阻害要因としてニホンスナモグリの生物撹拌による影響が示唆されているが,実験的にその影響を示した知見は見当たらない.そこで,人工海浜のニホンスナモグリの生息域に実験ケージを設置し,その中でホソウミニナを飼育する.ニホンスナモグリの存在の有無でのホソウミニナの死亡率や成長率の違いを明らかにし,ホソウミニナの定着に対するニホンスナモグリの影響を明らかにする.
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Report
(3 results)
Research Products
(3 results)