地震後残留変形低減機構を有する構造物の地震時挙動と設計法構築
Project/Area Number |
21K14291
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 23010:Building structures and materials-related
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小松 真吾 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (60845618)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | セルフセンタリング / 時刻歴応答解析 / 等価線形理論 / 等価粘性減衰定数 / 地震応答予測 / 残留変形低減 / 最大変形 / ひずみエネルギー |
Outline of Research at the Start |
本研究は,巨大地震後においても建物に残留する変形をほぼ0とできる特性を有したセルフセンタリング構造物の広範囲の変数を設定した時刻歴応答解析を通して,その地震応答性状を明らかにすること,および簡易な地震応答予測法を構築することを目指している. 本研究課題の達成により,構造技術者にセルフセンタリング構造の特性が正しく理解され,地震後継続使用可能な建物の普及が促進される.持続可能な社会形成に向けた大きな貢献が期待できる.
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Outline of Annual Research Achievements |
大地震時に構造部材の損傷を許容して地震応答の低減を図る耐震構造は経済的であるが,地震後の大きな残留変形により建物の継続使用が困難になる場合がある.セルフセンタリング(SC)構造は,損傷発生箇所の荷重と変形の関係が原点を指向するよう特別な装置を組み込むことで地震後残留変形をほぼ0とできるため,この問題を解決し持続可能な社会の形成への貢献が期待できる.本研究は,SC構造の地震応答性状を包括的な時刻歴応答解析により詳細に検討し,応答特性と設計変数間の物理的関係を解明する.そして,SC構造の地震応答を,動力学理論に基づき簡易に予測する方法を構築することが目的である. 2022年度は,まずSC構造の時刻歴応答解析から得られた半サイクル毎の等価剛性と等価減衰を用いて線形時刻歴応答解析を実施した.SC型復元力特性の場合にも等価線形化法が適用でき,非線形応答を良好に模擬できることを示した.この結果を踏まえ,既往の等価線形理論に基づくバイリニア(BL)型復元力特性を持つ1質点系モデルの地震応答評価法を,1サイクル当たりのエネルギー消費量の違いを考慮に入れてSC構造の場合に拡張した.前年度の1質点系モデルの時刻歴応答解析の結果を用い,拡張した地震応答評価法の応答予測精度を検証し,高精度のBL型の予測と比較して,SC型の予測は過度に安全側の傾向となることを示した.また,この予測精度低下の原因が,等価粘性減衰定数と等価速度応答スペクトルの評価値が実応答傾向を十分に反映できていないためであることを広範な時刻歴応答解析結果の詳細な検証から明らかにした.さらに,エネルギー消費がない場合の限られた解析結果からではあるが,等価速度応答スペクトルを実周期分布による重み付き平均で計算することにより,単純平均で計算した場合と比べて予測精度を改善できる可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
提案したセルフセンタリング型の地震応答予測法の精度を改善するために,実際の応答分布を考慮して等価粘性減衰定数を算定する方法を考案した.しかしながら,これには時刻歴応答解析によらず地震継続時間内の応答サイクル数やその非線形性の程度を推定する必要があり,当初の計画より検討範囲が大きく拡大している.そのため,予定していた等価線形化法による1質点系の応答評価法の構築までは至っていない.ただし,これには研究代表者が別種の構造システムの場合に既に確立した,応答サイクル数やその非線形性を考慮して応答を評価する方法が転用できる.加えて,多質点系の地震応答性状や応答評価法の精度検証に必要となる時刻歴応答解析プログラムを既に作成し,その高い精度を検証している. したがって,最終年度は予定していた残りの研究課題を迅速に遂行できると考える.以上を総合的に判断して,進捗状況はやや遅れているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2023年度は,1) 1質点系モデルの等価線形化法に基づく地震応答評価法の精度改善,2) 多質点系モデルの地震応答の検証,3) 地震応答評価法の多質点系モデルへの拡張とその予測精度の検証,の3点を実施する. まず1)では,セルフセンタリング構造の実際の詳細な応答傾向,すなわち入力地震波と構造物の特性により決定される応答サイクルの数とそれに対応した非線形の程度を予測する式をそれぞれ作成し,これらを等価粘性減衰定数と等価速度応答スペクトルの評価法に反映することで応答予測精度の大幅な改善を図る. 次に2)では,セルフセンタリング型復元力特性を各層に設定した多質点系モデルで時刻歴応答解析を実施し,セルフセンタリング構造と一般的なバイリニア構造の地震応答性状を比較する. 最後に3)では,既往の多質点バイリニア構造の応答評価法を2)で明らかにした多質点系の地震応答性状を反映しながらセルフセンタリング構造の場合に拡張する.そして,2)の時刻歴応答解析結果との比較を通して応答予測精度の検証を行う.
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)