トポロジカル超分子ビルディングユニット形成に立脚した多階層ナノ構造制御
Project/Area Number |
21K14477
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 28010:Nanometer-scale chemistry-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上沼 駿太郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (90891804)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | シクロデキストリン / ブロックコポリマー / 超分子 / 自己組織化 / ポリロタキサン / ナノシート / 結晶成長 / 空孔 / トポロジカル超分子 / ビルディングユニット |
Outline of Research at the Start |
近年申請者は、シクロデキストリン(CD)と高生体適合性ポリマーを水中で混合するだけで、階層的超分子自己組織化が生じ、超分子性ナノシート材料を作成することに成功した。この自己組織化体の構成単位は超分子集合により形成される。本研究では、この超分子性ビルディングユニットの形成速度論に立脚した階層的ナノ構造を制御する方法論・理論の構築を目指す。トポロジカル超分子の構造特性を活用した新しい自己組織化機構の制御方法を提案し、超分子ナノ構造体の形態・サイズ・分布・組織化の制御を実現する。
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Outline of Annual Research Achievements |
天然に存在する環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CyD)と高生体適合性の線状ポリマーを室温の水中で混合すると、超分子性ナノシート材料(PPRNS)が形成される。本研究では、形成・構造制御の方法論・理論の構築を目指し、サイズ・分布・組織化制御の実現を目指し研究を行っている。 本年度は、軸高分子の末端に官能基を付与してPPRNSの形成速度を調べた。末端にCyDとの会合定数が高い官能基を付与するとPPRNSの形成速度は加速した。一方でCyDとの会合定数の低い官能基を軸末端に付与するとPPRNSの形成速度は遅延した。ここで面白いことに、軸末端のCyDとの会合定数が異なると、PPRNSの形成速度だけでなく組成も異なる結果となった。当初はPPRNSにおけるCyDと軸の組成比は一定であると考えていたが、実際は、組成比は変化する値であることが見いだされた。軸分子とCyDとの理想的な包接錯体形成(1つのβ-CyDが2つのPOユニットを包接する)を仮定すると、CyD/軸の値は14である。つまりこれ以上の値をとったPPRNSには、軸高分子を包接していないCyDを有していることが示唆される。このような空孔性のCyDは、薬分子や機能性分子を担持できる可能性を有しており、DDS応用が期待される。 また、PPRNS形成において、加熱による溶解と冷却による結晶成長を繰り返し与え、PPRNSのサイズ拡大に挑戦した。従来法の作成ではPPRNSの一辺の大きさは2マイクロメートル程度であるが、今回の操作により作成したPPRNSでは一辺が5から10マイクロメートルとなっており、サイズ拡大に成功した。今後、サイズ拡大の機構を理解するとともに、さらなるサイズ拡大の実現を目指して研究を進めていく。本年度はこれらの研究以外にも、PPRNSの末端基を封鎖することによる分解抑制などにも着した。これらの研究についても随時進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度行ったPPRNSの末端基と形成速度の関係に関する研究について、末端基のCyDとの会合定数を変化させることで、PPRNSの形成速度が変化することはおおよそ予想がついていた。しかし、PPRNSの組成比が変化していたことは想定外であった。昨年度は断片的な結果として得られたが、本年度はこのPPRNSの組成比の変化についてより多くの実験データで確認することができた。特にCyDが軸に対して多くなっている点が興味深く、かつDDS等の応用先を見据えることができることから、今後その形成機構や制御について集中的に取り組みたいと考えている。またPPRNSのサイズ制御について、結晶核形成・結晶核成長の理論に基づいた実験スキームを与えることで、実際にPPRNSのサイズ拡大に成功したことも、本年度の成果と言える。これ以外にもPPRNSの末端基を封鎖すると、その溶解性が劇的に抑制されることも見出された。PPRNSの構造制御、物性制御に関わる様々な知見が得られ、かつ予想外な結果とそれに基づくさらなる展開が見いだされたことからも、現在のところ研究は順調に進展しているものと判断します。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、PPRNSの溶解機構、形成過程の解明、コーティングと機能測定などを行った。2022年度はPPRNSの軸末端封鎖による溶解抑制、形成機構の探求を行い、2021年度以上にPPRNSの形成と溶解における分子の振る舞いの具体的な描像が明らかになってきている。2023年度は、付与する軸末端基の種類をさらに増やして、分子論的な機構をより詳細に明らかにしたいと考えている。特に組成比に変化があったことは大変興味深く、PPRNS形成に対して軸末端基は形成速度に及ぼすだけでなく、結果として得られる構造に影響を及ぼすことを示している。すなわち、PPRNSには準安定状態と考えられる様々な状態すると考えられ、今後はそれらの組成比だけでなく結晶外形、サイズと厚さ、結晶構造などを明らかにし、PPRNSの多様な構造を形成メカニズムとともに体系的に理解したいと考えている。さらにはPPRNS中の空孔性CyDのDDS応用を目指して、薬分子または機能性分子の導入を行う予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(25 results)