Project/Area Number |
21K14581
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
長嶋 宏樹 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (60814027)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
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Keywords | 電子スピン共鳴 / クリプトクロム / 時間分解ESR / DEER / 部位特異的変異 / ラジカルペア / 磁場効果 / 光誘起距離測定 (DEER) |
Outline of Research at the Start |
渡り鳥は磁気を感じて, 渡りを行っている。このメカニズムはよくわかっていないものの, クリプトクロムが動物の磁気感受の第一候補タンパク質として注目されている。クリプトクロムは青色光を吸収して,光誘起電荷分離反応によりラジカルペアを形成する。このラジカルペアの磁場効果により, 渡り鳥は磁場を感じることができるのだと考えられている。しかしクリプトクロムが,“ラジカルペアを形成した後にどのような構造変化を起こしているのか”はわかっておらず, 磁覚の機構も不明である。本研究では, 電子スピン共鳴を応用した距離測定法を駆使し, 光で誘起されるクリプトクロムの構造変化を追跡し, メカニズムの解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
クリプトクロムは動物の磁気感受の第一候補タンパク質である。このタンパク質は青色光を吸収し、光誘起電荷分離反応によりラジカルペアを形成する。ラジカルペアの磁場効果により、磁場を感知することが可能であると考えられている。しかし、クリプトクロムがラジカルペアを形成した後にどのような構造変化を起こしているのかは未だ明らかではなく、磁場を感知した後のシグナルがどのようにして鳥の脳に伝わるのかも全く解明されていない。本研究は、これらの地磁気効果の後のメカニズムを明らかにするために、ラジカルを観測可能な電子スピン共鳴を用いて、光で形成されるラジカルおよびスピンラベルされたタンパク質の観測を行うものである。
本研究の計画された実験の遂行は、新型コロナウイルスの影響および世界的な半導体の不足のために遅れが生じた。この遅延を考慮し、クリプトクロムをはじめとするタンパク質へのスピンラベリング法をの検討と試料調製の最適化を行った。
当初の計画では、システインをターゲットとしたスピンラベル法を採用していたが、システイン残基がクリプトクロムの機能に重要な役割を果たす可能性が考慮された。このため、システインに代わるスピンラベルの方法として、クリックケミストリーを利用した新たなラベル法の開発に着手した。新規に設計されたスピンラベルの合成が完了した。 クリプトクロムの大量合成に関しては、タグフリーの精製されたタンパク質を得るためのプロトコルが確立された。しかし得られるタンパク質の構造の均一性やタンパク質の収率が大きな課題となっており、今後は特殊な大腸菌を導入するなど、タンパク質合成過程の最適化を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クリプトクロムのタンパク質は大腸菌を用いた系で行った。大腸菌の培養条件や超音波による破砕条件について定量的な解析を行い 10 mgスケール のクリプトクロムを得ることができた。しかしながら, その後のクロマトグラフィーにおいては, サブmg スケールまで収量が低下してしまい, 分光測定を行うために十分な量のクリプトクロムを得ることができていない。クロマトグラフィーの効率が著しく悪いことは, タンパク質の折りたたみが正常に行われず, 間違った構造をとり, 結果としてクリプトクロムにつけたタグ配列が外部に露出しないことが挙げられる。その原因は, 大腸菌中で合成されたクリプトクロムに、補酵素フラビンアデニンジヌクレオチドが結合できないことにあると考えている。そこで, フラビンを豊富に持つような特殊な大腸菌を導入するなどさらなる最適化へ向けた検討をする必要がある。 新規スピンラベル分子の合成には成功した。融点測定, 電子スピン共鳴スペクトル, また別のスピンラベルと反応させてビラジカルを作成して, スピンラベルのリンカーが機能することを確認した。 クリプトクロムのパートナー分子の一つとして考えられているIscA1の調製および電子スピン共鳴共鳴計測には成功した。IscA1が磁気に由来する凝集効果を示すこと, それが鉄イオンとの相互作用に由来することが電子スピン共鳴計測およびX線による解析から明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質の量を10 mg以上のスケールで取れるように, 大腸菌培養のスケールアップと条件の最適化に取り組む。さらにフラビンが効率よく発現したクリプトクロムに結合するよう, 遺伝子を調整された大腸菌を用いた実験を行う。 合成したスピンラベルについては, モデルペプチドなどを利用した距離計測を行い有用性を検討して, 論文として発表する。 IscA1については, 磁気受容に主要な役割を果たしている鉄原子の位置を明らかにするために, 電子スピン共鳴による距離計測を行う。
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