冷却イオントラップ分光法による分子内プロトン移動反応の微視的機構の解明
Project/Area Number |
21K14585
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平田 圭祐 東京工業大学, 理学院, 助教 (80845777)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
|
Keywords | プロトン移動 / 冷却イオントラップ赤外分光法 / 赤外分光 / グロータス機構 / ビークル機構 / 重水素 |
Outline of Research at the Start |
プロトン移動反応は化学・生命科学において最も重要な反応のひとつであり、プロトンがどのような機構で移動するのか興味がもたれる。しかし、プロトン移動の微視的な機構に関して理論予測が数多くなされている一方で、実験研究は少なく、プロトン移動反応の分子論的な理解は進んでいない。そこで本研究では、水和環境に応じてプロトン付加位置が変化する分子群に着目して、プロトン移動の微視的な機構を紫外/赤外分光法を用いて明らかにすることを目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
プロトン移動は化学反応における最も基本的な素過程であり、有機合成のみならず生命現象においても鍵となる役割を果たしている。これまで、水中のプロトン移動反応として、グロータス機構とビークル機構が提唱されてきた。グロータス機構はプロトンが隣の水分子に次々に乗り移ることでプロトンが移動する機構であり、ビークル機構はプロトンがヒドロニウムイオン(H3O+)の形で移動する機構である。グロータス機構を仮定するとプロトンの拡散係数等が合理的に説明できることから、グロータス機構が広く受け入れられてきたが、実験による実証研究は未だに進んでいない。本研究では、水和によりプロトン移動が誘起される分子群に着目して、プロトン移動の微視的な反応機構を赤外分光法を用いて明らかにすることを目指している。
1) プロトン付加分子の気相中でのプロトン付加位置の決定 複数のプロトン付加位置を有するニコチン、p-アミノ安息香酸の気相中でのプロトン付加位置を冷却イオントラップ赤外分光法と呼ばれる先端分光技術を用いて明らかにした。その結果、水分子の個数に応じてプロトン付加位置が変化することが明らかになった。この成果はThe Journal of Americal Chemical Society誌、Physical Chemistry Chemical Physics誌に掲載され、表紙に選出されるなど高く評価されている。 2) プロトン移動反応の機構解明 1)で水和によるプロトン移動反応が起きることが明らかとなり、その反応機構を調べるために重水を用いた同位体標識法を赤外分光法と組み合わせた。その結果、p-アミノ安息香酸の水和クラスターにおいては、水和する分子の個数に応じて反応機構(グロータス機構とビークル機構)が変化することが強く示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、同位体標識と赤外分光法を組み合わせてプロトン移動反応のメカニズムを解明することを目指した。この当初の目論見通りに研究を進めることができた。さらに、水和の程度によってプロトン移動のメカニズムが変化する、という新たな物理化学現象を捉えることができ、当初の想定以上の学術的成果を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
温度を制御した条件で、プロトン移動を引き起こす実験系を構築し、プロトン移動の反応障壁を実験的に決定する。プロトン移動反応のメカニズムによって反応障壁がどう変わるか明らかにする。
|
Report
(2 results)
Research Products
(32 results)