Project/Area Number |
21K14700
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 36010:Inorganic compounds and inorganic materials chemistry-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
及川 格 東北大学, 工学研究科, 助教 (40733134)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | イオン伝導性酸化物 / 層状ペロブスカイト酸化物 / 固体NMR / プロトン伝導体 / 酸化物イオン伝導体 / 欠陥化学 / 固体酸化物形燃料電池 / NMR分光法 / SOFC |
Outline of Research at the Start |
本研究では、O2-、H+デュアルイオン伝導体に着目してイオン伝導現象を包括的に解明する。その成果を元に新規デュアルイオン伝導体を開発することで、SOFCの中温作動化、低コスト化を実現し、水素社会の実現に貢献する。イオン伝導現象を包括的に解明するため、NMR分光法によりO2-とH+の伝導現象をイオン毎に区別して評価し、電気伝導度などと整合することでデュアル伝導体の伝導機構を明らかにする。さらに、高分解能NMR分光法による欠陥構造解析と組み合わせることで、イオン同士の相関や欠陥との会合の影響も含めて包括的にイオン伝導現象を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はデュアルイオン伝導体Ba7Nb4MoO20(BNM)へのアクセプタードーピングを行い、局所構造とイオン伝導度に及ぼす影響を明らかにした。アクセプターとしてTi4+とAl3+の元素置換を試みたところ、Al3+はあまり固溶しないことが分かった。一方、Ti4+は異相が出るもののある程度固溶することが明らかになった。この異相は焼結後に後熱処理を行うことで軽減することができた。最も異相を抑制できた試料に対して高磁場高分解能NMRにより局所構造を明らかにした結果、Ti添加がNbの局所構造に影響を及ぼすことが明らかになった。この試料に対して、電気伝導度を測定したところ、無添加試料に比べて全伝導度は低下するものの、加湿雰囲気下でのプロトン伝導の寄与が増加することが分かった。これは、固溶したTi4+の一部がアクセプターとして機能し、酸素空孔の形成とその水和反応によるプロトンの導入に寄与するためと示唆された。Ti添加試料において全伝導度が低下したことは、異相の析出や緻密化が不十分だったことが要因として考えられ、Ti添加量や熱処理条件の最適化による異相の抑制や緻密化により全伝導度の向上が可能と期待される。今後は、全伝導度の向上に加えて、温度可変マジック角回転NMRによるイオンダイナミクスの観測や2次元NMR測定の導入によるイオンキャリア間の相関の解明に取り組む。また、それらに加えて、異相がBNMの局所構造、欠陥形成、プロトン量、イオン伝導性に及ぼす影響も明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Ti添加によりプロトン伝導性の向上が明らかになったため、イオン伝導性の包括的な解明に向けて前進はできたが、異相の出現により合成条件の最適化や異相の影響評価の必要性が生じたため、想定よりもわずかに進捗が遅れていると考えている。しかし、昨年度までに17O同位体置換手法が確立され、17O NMRによる解析技術も大幅に向上していることから、異相の問題が解決されれば、1H、多核NMRを中心とした解析手法を活用することでイオン伝導メカニズムの解明につながる知見が得られると考えている。加えて、他のイオン伝導体への展開も進めているため、それらの成果も今後期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで取り組んできたBa7Nb4MoO20(BNM)について、単相化と緻密化によるデュアルイオン伝導性の向上に取り組むことに加え、新たな材料系としてRuddlesden-Popper(R-P)型酸化物に注目し、伝導機構の解明とイオン伝導度の向上に取り組む。R-P型酸化物はペロブスカイト層と岩塩層からなる層状ペロブスカイト型酸化物であり、元素置換によるイオンキャリアの導入に加えて、イオン交換により岩塩層にもイオンを挿入できることからデュアルイオン伝導性が期待される。さらに、イオン伝導機構を解明する手法として、温度可変マジック角回転(MAS) NMR測定に取り組む。これまで温度可変NMR測定はMASを行わない状態での測定が一般的であり、分解能が低いため限られた材料系でのみイオン伝導性が解析されてきたが、本研究では高分解能測定が可能なMASと温度可変を組み合わせて、様々な材料系に対してイオン伝導性の解析を行っていく。それにより、特定のイオン種のみに注目したイオンダイナミクスの解明が可能になると期待される。
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