ナノ量子センサーによるAll-opticalな細胞内熱伝導計測
Project/Area Number |
21K15053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
外間 進悟 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (00757635)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 温度計測 / 炭化ケイ素ナノ粒子 / 化学修飾 / ナノダイヤモンド / 電子線照射 / NVセンタ / 量子センサ / 細胞 / 温度 |
Outline of Research at the Start |
細胞内には熱力学法則に反する異常に高い温度勾配が形成されていることが知られているが、そのような高い温度勾配が形成される要因については明らかにされていない。申請者はこれまでに、ナノ量子センサーを利用し、細胞内の熱伝導率が水より著しく低くまた大きなばらつきを有することを明らかにした。また、それが細胞内温度勾配形成に寄与している可能性を突き止めた。本研究ではこれまでの実験手法をさらに発展させ、我々が報告した著しく低い熱伝導率や、大きなばらつきを与える要因を明らかにすることを目的とする。本研究によって、細胞の熱恒常性維持機構の一端が解明され、温度生物学に新たな知見を与える。
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Outline of Annual Research Achievements |
胞内には熱力学法則に反する異常に高い温度勾配が形成されていることが知られているが、そのような高い温度勾配が形成される要因については明らかにされていない。申請者はこれまでに、ナノ量子センサーを利用し、細胞内の熱伝導率が水より著しく低くまた大きなばらつきを有することを明らかにした。本研究を発展し熱伝導率の局所性を探る上で、ナノ量子センサーや計測技術のさらなる改善が急務であった。これまで温度計として利用していた蛍光性ナノダイヤモンドFNDは、ODMR信号を得る際の磁気共鳴周波数が2.87GHzであり、これは水の吸収帯(2.4GHz)と近いため、 細胞計測におけるアーティファクトとなる可能性があった。一方で、All-opticalな温度計測は、637nmのゼロフォノン線を計測することで温度計測を達成できるが、その変化は0.015nm/℃と非常に小さく実時間での温度計測は困難であった。 そこで本研究ではFNDと並行して、温度計測可能な炭化ケイ素ナノ粒子の開発を進めた。SiC内部には格子欠陥であるSi-空孔中心(SiV: Silicon-vacancy center)を人工的に導入することができる。SiVは近赤外(800ー000 nm)の蛍光を発し、NDと同様にODMR特性を有することが報告されている。しかし、このような発光・ODMR特性に関する研究は、1ミリメートル角の板状のSiC内部のSiVに関して報告されたもののみであり、SiCナノ粒子に関する報告は皆無である。そこで本申請では、NDの合成・加工経験を通して培った技術を駆使し、細胞量子センシングに資するSiV内包型SiCナノ量子センサーを世界に先駆けて新開発し、細胞への親和性を評価、その後、標的蛋白質への選択的標識を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、SiCナノ粒子の凝集解砕、表面コーティング、機能化、目的の生体分子に選択的に標識する技術の開発をおこなった。まず、Thermal-oxidation chemical-etching法を開発し、金属汚染物質を含まないSiCナノ粒子を高収率で分散させることに成功した。電子顕微鏡で観察した粒子径はおよそ100nmであり、水溶液中で動的光散乱法によって計測した粒子径も同様の粒子径を示した。さらに、厚さを制御できるポリドーパミンコーティングに成功、その表面に金ナノ粒子を装飾するプラットフォームとして使用することで、フォトサーマルプローブとして利用することが可能であることを示した。また、ポリグリセロールコーティングにより、生理条件でも沈殿しないSiCナノ粒子を調整することに成功した。さらに、ポリグリセロール修飾の末端のOH基をシングルポットで機能化させる新たな合成法を開発した。この方法を用いることで、ビオチンを介した免疫染色法により、細胞表面のCD44蛋白質を選択的に標識することに成功した。本研究で開発された方法は、SiCナノ粒子をバイオ医療に応用するための基礎的なものであり、バイオイメージングやバイオセンシングへの応用の可能性を引き出すために、様々なSiCナノ粒子の開発を大幅に加速させるものである。本研究成果はアメリカ化学会が発行する、ACS Applied Materials & Interfaces 誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、炭化ケイ素ナノ粒子内部に効果的に空孔を導入する方法を検討する。イオン照射はダイヤモンド内部に欠陥を形成させることができるが、SiCナノ粒子の結晶構造内部に空孔を作ることができるかについては研究が進められていない。本研究ではhBNナノ粒子に対してH, He, B, N, Cイオンを様々な照射量(1E13-1E18 / cm2)で照射し以下の評価を行う。 蛍光信号:SiCの発光は600ー900 nm (CsiVc), 800ー1300 nm (Vsi), 1100ー1300 nm (VsiVc)と生成する格子欠陥によって変化する。イオン照射によるどのような欠陥形成が促進されるのかについて、照射条件ごとに明らかにする。 磁気共鳴信号:SiC中のVsiの磁気共鳴周波数は70MHz程度に観察される。過剰な照射は結晶構造に歪みを与え、磁気共鳴スペクトルのブロードニングやSN比の低下につながる。磁気共鳴スペクトルの強度、線幅、SNの点からスペクトルを評価する。 温度依存性:バルクにおけるSiCの温度依存性(結合定数)は、ー1.1MHz/Kであると報告されているが、ナノ粒子については報告されていない。本研究でSiCナノ粒子の結合定数を明らかにする。 以上より温度計測に最適なイオン照射条件が決定次第、前年度までに開発した凝集開催法、表面化学修飾法、選択的分子標識法を駆使し、細胞局所の熱伝導率計測を達成する。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)