オミクスによるセントロメア機能とゲノム多様性の研究
Project/Area Number |
21K15064
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43050:Genome biology-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 裕太 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任講師 (10897044)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | ゲノム / エピゲノム / セントロメア / 遺伝的多様性 / オミクス |
Outline of Research at the Start |
ヒトゲノム中でセントロメア(細胞分裂時に動原体が形成される位置)は、高次繰返しと称される特異な繰返し構造をもつ領域内部にあるため、正確な配列を決定した上での解析は困難だった。しかし、高精度長鎖や超長鎖のDNAシークエンシング技術が2019年頃より普及したことで、セントロメア領域の配列決定とそれに基づく機能解析が可能となりつつある。本研究では上述の新規観測技術を活用してセントロメア領域のゲノム多様性を深く分析し、ゲノム配列の多様性がセントロメア機能に与える影響を、エピゲノム(特異的ヒストンタンパクや塩基修飾)解析とトランスクリプトーム(特に非翻訳性RNAの転写活性)解析により理解することである。
|
Outline of Annual Research Achievements |
特異な繰返し配列で知られるヒトセントロメアDNA配列構造の個人間の多様性を調査するとともに、そのようなゲノム多様性とセントロメア機能等とがいかなる関連をもつかを、セントロメア特異的ヒストンタンパク質の集積やセントロメア由来の転写産物の解析を通して明らかにすることを目指している。 高精度長鎖DNA解読技術(HiFiデータ)に基づくセントロメア・ゲノム情報の解析では、日本人270人のセントロメアにおける個人間の構造変異分布に基いて、一般の多型サイトにおける遺伝型に相当する概念である「セントロタイプ」の概念を導入した。日本人集団とそれ以外の比較でも同一のセントロタイプが検出されたことから、このような多様性の起源は人類の各集団の地理的な分散以前に遡ると推定される。また、日本人集団で明確なセントロタイプの分離が認められる染色体においては、日本人以外のデータでも高い多様性を示す傾向がみられた。 また、機能との関連については、ゲノムワイド関連解析で検出される疾患関連多型であってセントロメア周辺領域に位置するものが、セントロタイプと「連鎖」していることを確認した。このこと自体は、セントロメア全体にわたって相同組換えが抑制されているという広く知られた現象から説明可能であるが、セントロメア・ゲノムのより直接的な表現であるセントロタイプの分析が疾患研究における有用性を示唆するものといえる。 セントロメア・エピゲノムの解析では、上記HiFiデータに内在するDNA塩基修飾情報(特にCpGメチル化情報)を活用することで、セントロメア内部の繰返し配列構造とDNAメチル化との相関解析を進めている。検体ごとに全般的なメチル化レベルが異なっている状況が見られたことは想定外であったが、この効果を除外したうえで、後述する(構造変異の含有状況を反映した)セントロタイプと相関したメチル化の差異が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、概要で述べたセントロメア・ゲノムの解析について論文にまとめたのち、投稿と修正のサイクルに入っている。特に、研究者向けに公開されている(日本人集団以外の)高精度長鎖DNA解読データを活用し、日本人集団とそれ以外の比較解析を実施した。また、疾患関連多型とセントロタイプの有意な関連(連鎖)を見出し、疾患研究における有用性を示唆できた。セントロタイプの概念を基礎にCpGメチル化情報の解析を進めた(こちらは継続中)。また、セントロメア特異的なヒストンタンパクの分析では、従来のChIP-seq法より精度の向上が見込める CUT&Run 実験を進め、次年度のデータ取得に備えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
諸外国ではTelomere-to-telomere (T2T)と称される染色体全長・高品質のゲノム解読が推進され、その過程でセントロメア配列の多様性の理解も急速に進んでいる。この状況を念頭におくと本研究課題で開発した手法のメリットはT2Tを目指す研究デザインの15分の1未満のコストでセントロメア・ゲノムの記述が得られるという点にある。実際にこれを活用してT2Tと相補的な角度から新規の知見を提供できていると考えられるので、これまでに得られている結果をもとに論文出版を最優先で進める。 一方でChIP-seq および Cut&Run によるセントロメア・エピゲノムの集団内多様性の分析とRNA-seqによるトランスクリプトーム解析に関しては新規性がより高いので、2024年度の前半にデータの収集を完了しだい構造変異との関連を解析していく方針である。2024年度が本研究課題の最終年度であるため、全階層を含めたオーミクス的な視点でのセントロメアの記述を目指して論文化の完遂を目指す。
|
Report
(3 results)
Research Products
(3 results)