空間的な単一細胞の遺伝子発現解析による始原生殖細胞の潜在的多能性の制御機構解明
Project/Area Number |
21K15107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
池田 宏輝 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70819911)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 空間的トランスクリプトーム解析 / 卵子 / 卵巣 / 生殖細胞 / トランスクリプトーム / LCM / Single cell / PGC / 単一細胞 / リプログラミング |
Outline of Research at the Start |
始原生殖細胞は潜在的に多能性を有し、生体内での多能性制御のモデルとして最適である。始原生殖細胞の潜在的多能性の制御には、生殖巣に向かって移動しつつある個々の始原生殖細胞と周囲の微小環境との相互作用が重要と考えられ、その理解には、微小環境の組織学的情報にリンクした精密な遺伝子発現解析が必要である。本研究では、固定組織切片からの単一細胞遺伝子発現解析の効率や定量性を大幅に改善した手法を開発し、移動期の始原生殖細胞と、その周辺の微小環境構成細胞の遺伝子発現解析を行う。本研究によって、始原生殖細胞が周辺環境への適応しつつ、潜在的多能性と生殖細胞への分化能を維持する分子基盤を解明することが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、移動期の個々の始原生殖細胞とその周辺環境を構成する細胞の詳細な遺伝子発現解析により、生体内における適切な多能性や分化の制御機構、これに関わる微小環境との相互作用の分子基盤を解明することである。組織内における配置情報とリンクした単一細胞レベルでの詳細な遺伝子発現情報の取得手法の開発について、前年度に決定した手法を用いて、マウスの卵巣を包埋、脱水固定、染色し、卵胞中の卵母細胞、及びその卵母細胞に隣接する顆粒膜細胞と隣接しない顆粒膜細胞をLCMにより単一細胞レベルで切り出し、取得し、cDNA合成の後、定量的PCRによる主要遺伝子の定量により、固定切片上の単一細胞からのRNA回収とcDNA合成効率を評価した。その結果、これまで、培養細胞(マウスのES細胞)で得られていたことと同様に、卵母細胞、顆粒膜細胞の両者から網羅的な遺伝子発現を解析するに十分な質のcDNAを合成できていることが確認できた。さらに、当該cDNAよりNGSライブラリーを作製し、トランスクリプトームの詳細な解析したところ、各細胞において5000~15000程度の遺伝子が検出できていることが確認できた。このことは、我々が開発した手法を用いることで脱水固定し、染色した組織から単一細胞レベルでトランスクリプトームを詳細に解析することが可能であることを示唆している。加えて、単一の顆粒膜細胞のトランスクリプトームを卵母細胞からの位置情報と結び付けて解析することで、卵母細胞に隣接するか、卵母細胞より離れているかで同じ顆粒膜細胞であっても遺伝子発現プロファイルが異なっていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、前年度の培養細胞を用いた系により決定した、固定、染色、cDNA合成等の種々の条件を組織であるマウスの卵巣に応用し、卵巣に含まれる卵母細胞と卵母細胞を取り囲む微小環境を構築する顆粒膜細胞のトランスクリプトームを解析した。その結果、染色固定した組織切片上の細胞の配置や形態情報といった画像情報とリンクした状態で遺伝子発現プロファイルを解析することができ、卵母細胞の成熟過程における遺伝子発現の変動、各段階にある卵母細胞の大きさに従って発現する遺伝子、抑制される遺伝子群を同定することができた。加えて、体細胞に比べて大きい卵母細胞だけでなく、直径10μm程度の大きさである顆粒膜細胞のトランスクリプトームプロファイルを解析することできた。その結果、卵母細胞を基準とした位置関係(卵母細胞に隣接するか、隣接していないか)によって顆粒膜細胞が異なる遺伝子発現プロファイルを持っていることが示唆された。また、詳細な解析により、卵母細胞に隣接する顆粒膜細胞のいくつかは、卵母細胞で高発現している転写産物を持っていることが示唆され、本手法によって得られるデータによって、これまで捉えられてこなかった事象が解析可能であることが示された。これらのことは、研究計画の前半で開発する予定であった始原生殖細胞とその微小環境を構築する細胞のトランスクリプトーム解析が可能な手法の確立が完了したことを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、これまでに確立した染色固定切片からの形体、配置情報とリンクした単一細胞レベルのトランスクリプトーム解析手法を用いて、個々の始原生殖細胞がそれらの周辺の微小環境とどのような相互作用をしているのか解析する。まず、始原生殖細胞の移動が確認できるE8からE12.5までの胚を固定化、染色切片を作製し、個々の始原生殖細胞とその周辺細胞をLCMにより採取し、高精度な単一細胞遺伝子発現解析を行う。つづいて、解析データから始原生殖細胞のマーカー(Prdm14等)の発現を確認すると共に、既存の始原生殖細胞のトランスクリプトームデータと比較解析し、手技の安定性、精度評価を行う。また、個々の始原生殖細胞が生殖堤へ移動する過程で発現変動する遺伝子、恒常的に発現する遺伝子をその周辺細胞も含め同定する。加えて、移動期の始原生殖細胞と隣接する体細胞で発現変動する遺伝子の機能評価する。特に、生体外での始原生殖細胞の脱分化を促進し、腫瘍化抑制に必要なPTENや、始原生殖細胞の移動に関与するCXCR4やSDF-1に関わるシグナル因子群の遺伝子発現変動にも注目し、遺伝子の挙動解析を行う。ここまでの実験により得られたデータ、解析手法等を論文として投稿する。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)