細胞内共生前に獲得したDnaA非依存型ゲノム複製機構とその進化的意義の解明
Project/Area Number |
21K15142
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45010:Genetics-related
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大林 龍胆 静岡大学, 理学部, 助教 (90778333)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | DNA複製 / シアノバクテリア / DnaA / 細胞内共生 / ゲノム倍数性 |
Outline of Research at the Start |
dnaA遺伝子はほぼ全ての細菌に保存されていることから、DnaAによるゲノム複製制御機構は細菌が多様化する以前に獲得した共通のメカニズムであると信じられてきた。一方で、多くの共生細菌やオルガネラゲノムは、dnaA遺伝子をコードしていないことが近年のゲノム解析でわかってきた。祖先細菌はDnaAシステムであることから、共生進化過程でDnaAに依存しない複製機構へと進化したことが示唆されるが、詳細な複製機構や、なぜDnaAシステムを失ったのかは全く明らかとなっていない。本研究ではDnaAに依存しない複製開始機構の詳細な分子メカニズムとその進化的意義を体系的に理解することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
すべての生物においてゲノムの複製は個を維持する上で必須であり、細菌ではDnaAという複製開始因子が特定領域からの複製を制御している。しかし、多くの共生細菌や共生細菌由来のオルガネラゲノムは、dnaA遺伝子をコードしていないことが近年のゲノム解析でわかっており、共生進化過程でDnaAに依存しない複製機構へと進化したことが示唆されるが、詳細な複製機構は全く明らかとなっていない。そこで本研究ではDnaAに依存しない新たな複製開始機構の解明を目指している。 本年度は昨年度に確立した遺伝学的手法を用いて、さらなる複製関連因子の探索をおこなった。より複製開始に直接関係するヘリカーゼローダーに着目し、温度感受性株の取得を試み、その抑圧変異株の解析から複製開始因子のスクリーニングを試みた。昨年度とは異なるSynechocystis sp. PCC 6803(DnaA非依存のシアノバクテリア)のヘリカーゼを標的として、シアノバクテリア内で保存性の高いアミノ酸を同定した。そのアミノ酸をすべてアラニンに置換した結果、5つの異なるアミノ酸置換によって温度感受性を示すことがわかった。さらに、このTS株から温度感受性抑圧変異株の取得を試みた。その結果、4つのTS株からそれぞれいくつかのサプレッサーを取得することに成功した。現在、このサプレッサーにおいて全ゲノム解析により、サプレッサー変異の同定を試みている。また、このTS株の特徴を理解するため、温度シフトによるDNA複製など細胞周期への影響を解析した。 さらに今年度はインフォマティクス解析により、さまざまなシアノバクテリアを対象にDnaA非依存に特異的にコードされている因子の探索も行った。その結果、いくつかの候補遺伝子が示唆されてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は昨年度のdnaB遺伝子同様にランダム変異導入によってTS株の取得を目指した。しかし、この方法ではTS株は一つも取れなかった。そのため、保存性の高いアミノ酸にしぼり、人為的に変異を導入しTS株を取得した。TS株の取得までに半年以上の時間を要してしまったため、計画に遅れが生じた。昨年度取得したdnaB遺伝子のTS株とサプレッサーの解析は順調に進んでおり、抑圧の原因を特定しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)TS変異のDNA複製への影響:ヘリカーゼローダーは複製開始段階で作用すると考えられるが、複製の進行にも関与するという報告があるため、各TS変異が複製のどの段階(開始または進行)に関与しているのかを検証する。抑圧変異から相互作用因子の機能予測のためにも、各TS変異の特徴付けは必須である。 (2)サプレッサー変異の同定:各TS変異株からサプレッサー(抑圧変異株)をいくつか取得した。この変異を同定すべてく、全ゲノムシーケンス解析を実施予定である。この解析により、ヘリカーゼーローダーと遺伝的に相互作用する因子を同定し、複製開始因子候補をスクリーニングする。 (3)抑圧変異よりスクリーニングした因子の検証:(2)において同定した因子が本当に複製開始に関与するのかどうかを検証するために、欠損株の作製、またChIP解析やヘリカーゼローダーとの相互作用解析などを実施する。 (4)DnaA非依存種のみに存在する因子の検証の検証:今年度共同研究として行なったインフォマティクス解析により示唆された、DnaA非依存種にのみ存在する遺伝子の解析を進める。具体的にはノックアウトや過剰発現株を作製し、その影響を検証することで、DnaA非依存への進化的意義へも迫る。
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Report
(3 results)
Research Products
(17 results)