Project/Area Number |
21K15151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
屋宜 禎央 九州大学, 農学研究院, 助教 (50878080)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | リーフマイナー / 潜葉習性 / 寄生蜂 / 共生微生物 / モグリチビガ科 / ツヤコガ科 / 種分化 |
Outline of Research at the Start |
同じ植物上に複数の近縁な種が共存する潜葉性小蛾類(特にモグリチビガ科とツヤコガ科)について形態情報や遺伝情報から種多様性の解明を行う。各種の幼虫の潜葉習性を明らかにし、分子系統解析により各習性の進化パターンを明らかにする。次に、多様化の要因として、寄生蜂や共生微生物と関連性があるか、ある場合は小蛾類にどのような影響を与えているかを検証する。さらに、主要な種分化の要因(地理的隔離や寄主転換)で種分化したと考えられる潜葉性小蛾類と習性の進化パターンの比較や分岐年代推定を行うことで、多様化に寄与したと考えられる小蛾類の各潜葉習性の適応的意義を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
植食者である多くの蛾類の中でも原始的なグループは、潜葉性といった内食性の獲得が多様化に寄与したと考えられている。また、昆虫の多様化の主要な要因として地理的隔離や寄主転換がよく知られている。しかし、それだけでは十分に多様性の要因を説明できない場合がある。申請者はモグリチビガ科やツヤコガ科などの潜葉性小蛾類の調査で、同じ植物種を寄主とする複数種の中には、たがいに近縁でかつ共存するものがいることをいくつかの植物種において確認した。これらの幼虫は、それぞれが残す潜孔の形状や、植物の利用部位といった潜葉習性に違いがあることから生態的種分化の一例である可能性がある。そこで、本課題では種分化に関連する可能性のある寄生蜂と共生微生物との関係について着目し、各潜葉習性の適応的意義を明らかにすることを目指す。 一方で小蛾類は、未記載種が多く含まれており、正確な種多様性の解明から行う必要がある。 そこで、同じ寄主を利用する複数の小蛾類の検討を行い様々な分類群において未記載種の発見を含む新知見を得た。また、今年度もこれまでと引き続き日本各地で調査を行い、ブナ科、バラ科等を寄主とする種の採集を行った。昨年採集したサンプルからは、蛾類と寄生蜂の両方を一部羽化させることができた。得られた寄生蜂については、DNAバーコーディングと外観による同定と、寄主範囲について検討を行った。一部の寄生蜂複数種において、同じ植物を寄主とするが潜葉習性の異なる小蛾類複数種に寄生する場合があることが示唆された。 また、16S rRNA菌叢解析の結果から、同じ種の蛾類であっても、地点ごとに異なる系統のWolbachiaと共生することがあることが確認された。また、1個体だけだがWolbachiaの重複感染も確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も引き続きサンプリングを行って、潜葉性小蛾類を採集した。得られた幼虫は来年度も引き続き飼育を行う。昨年度から引き続いて飼育を行っていた各種幼虫に関しては、多くはないが蛾類成虫とその寄生蜂の両方を得ることができた。 得られた寄生蜂に関してはDNAバーコーディングと外観による同定を行った。それにより、当初から予想していた通り、同じ寄主植物を食べるが潜孔の形状が異なる複数種の蛾類に寄生できる寄生蜂が複数種確認できた。 また、共生微生物であるWolbachiaの検出についても、サンガーシーケンスだけでなく次世代シーケンサーによる菌叢解析を行った。その結果、異なる地点の同一種の蛾類において、異なる系統のWolbachiaが検出され、さらに1個体だけだが同一個体でWolbachiaの重複感染も確認できた。 このように一定の結果が得られている一方で、蛾類の系統関係の推定については、ツヤコガ科など一部の分類群では、一般的に系統関係の推定に有用な領域とされている領域であっても、他の分類群と比較して塩基置換率が非常に高いか、逆に変異が少ない領域が多く、領域ごとに樹形が大きく変わるために十分に系統関係が推定できていない。 これらのことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のサンプリングに関しては特に不足しているサンプルの採集程度に留める予定である。 寄生蜂との潜葉性蛾類との関係については、より多くの寄生蜂の解析サンプル数を増やし、より正確な各種の寄主範囲の解明を目指す。 また、各種蛾類の体内から検出されるWobachiaに関しては蛾類の系統や潜葉習性との関連性を明らかにできるように、複数領域を用いたジェノタイピングと系統関係の推定を行う。さらに、より多くの地点のサンプルを用いてWolbachiaの検出を行い、Wolbachiaの系統と蛾類の分布や生息環境との関連性などより詳細な検討を行う。 蛾類の系統関係の推定に関しては、より系統関係の推定に適した領域およびプライマーの探索を行うとともに、ごく近縁な種間の系統関係に関してはMIG-seqなどの解析を行うことでより信頼性の高い系統樹の作成を行う予定である。
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