Project/Area Number |
21K17917
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 64040:Social-ecological systems-related
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小峰 浩隆 山形大学, 農学部, 助教 (60870889)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 新興感染症 / マダニ媒介感染症 / マダニ / 生物多様性 / 希釈効果 / 都市化 / 島 / 野生動物 |
Outline of Research at the Start |
感染症は人間社会にとって最大級の脅威である。エイズやエボラ出血熱、新型コロナウイルスなど、新興感染症の多くが野生動物に由来する感染症であり、その数は増加している。これら新興感染症の感染リスクに関して、生物多様性が高ければ感染リスクが低減するという“希釈効果仮説”が提唱されているが、その検証は不十分であった。本研究では、マダニが媒介する新興感染症を対象に、患者発生状況及び都市化傾度の異なる各環境において、病原体の宿主である野生動物及びマダニ類の種構成・密度・抗体保有率等を明らかにすることで本仮説を検証する。本研究により、患者発生の背景にある、感染リスク-生物多様性関係の一端を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、野生動物由来の新興感染症が世界中で発生し、大きな問題となっている。新興感染症は、人間の生命や健康を脅かし、経済や文化など、人間社会の基盤に大きな影響を与える可能性がある。そのため、新興感染症の感染リスクの背景を理解する事は、学術的にも社会的にも重要な課題である。本研究の目的は、高い生物多様性が感染リスクを低減させるという希釈効果仮説の検証により、感染リスク-生物多様性関係の一端を明らかにする事である。新興感染症として、マダニが媒介する感染症を対象にする。3年目である当該年度では、2年目に引き続き感染リスクとしてマダニ類の生息密度、生物多様性としてマダニ類の宿主である野生動物各種の生息状況の調査を実施した。申請時の研究計画では、研究代表者が所属していた森林総合研究所が位置する関東地方において調査を実施する計画であったが、研究代表者の山形大学への異動に伴い、1年目に調査地を山形県周辺に変更した。山形県の都市や森林などの様々な環境に設定した15か所の調査地において、旗ずり法(120*70cmの白布による採集法)を用いてマダニ類の生息状況及び相対密度の調査を行った。また、離島である飛島においても、継続してマダニ類の生息状況等の調査を行った。その結果、マダニ類の種構成は、地域や季節、年によって大きく異なる事が明らかになった。また、これまで北日本で確認された事のなかった南方系のマダニ類を複数確認した結果について、国際誌Experimental and Applied Acarology誌から論文を発表した。同時にプレスリリースも行い、広く成果を発信した。さらに、野生動物各種からマダニ類を採集し、現在種同定を進めている。今後は、マダニ及び野生動物相の調査を都市や森林、離島にて継続すると共に、これまでの成果を論文として公表していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時当初の研究計画では、当時研究代表者が所属していた森林総合研究所が位置する関東地方を主な調査地とする予定であった。しかし、研究代表者の山形大学への異動を踏まえ、1年目に山形県周辺を主な調査地とする事に変更した。東北地方では、重症熱性血小板症候群(SFTS)や日本紅斑熱等のマダニ媒介感染症の感染者がほとんど報告されていない。一方で、東北地方のマダニ相や宿主である野生動物との寄生関係は未解明な点が多い。そのため、様々な環境におけるマダニ相や宿主動物との関係については記載的価値も高いため、継続して調査を実施した。3年目である当該年度は、本州本土の都市部から森林にかけての各景観及び離島である飛島において、前年度に引き続きマダニ類及び野生動物各種の生息状況の調査を行った。その結果、マダニ相は地域や季節、年によって変化が大きい事が明らかになってきた。また、マダニ相に関する一部結果を用いて、前年度から国際誌より審査を受けていた論文が出版され、東北地方における南方系マダニ類を確認した成果を発表した。論文の出版と同時にプレスリリースを行い、複数の新聞等のメディアを通して一般の方々に広く成果を発信した。また、イノシシやツキノワグマといった野生動物各種からマダニ類を採取し、現在種同定を進めている。以上の事から、2年目に引き続き成果を形にしつつある。そのため、おおむね順調に進んでいるという評価が適切であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行にあたって、当初所属していた森林総合研究所から山形大学への所属の変更に伴い、調査地を山形県周辺に変更し、マダニ類及び野生動物相の調査を行ってきた。その結果、マダニ相は地域や季節、年によって変化が大きい事が明らかになってきた。マダニの種組成や相対密度の変化はマダニ媒介感染症の感染リスクにも影響するため、今後はマダニ相の地域や季節、年変化や、宿主動物相との関係やその変化についての調査を継続していく。また、これまでの調査結果から、マダニ類の種組成は哺乳類及び鳥類に依存する可能性が考えられるため、幅広い分類群の関係性を調査していく。さらに、これまでは山形県周辺が主な調査地であったが、今後は、宮城県や岩手県、秋田県といった東北地方の他の地域でもマダニ相の調査を進め、より広い系におけるマダニと宿主動物との関係を明らかにしていく。得られた成果は学会での発表や論文として出版し、並行して一般の方々にも成果を発信していく。
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