Project/Area Number |
21K18148
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 14:Plasma science and related fields
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
鹿園 直哉 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 上席研究員 (10354961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正規 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 主席研究員 (70312080)
森林 健悟 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 上席研究員 (70354975)
米谷 佳晃 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部, 主幹研究員 (80399419)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥25,610,000 (Direct Cost: ¥19,700,000、Indirect Cost: ¥5,910,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2021: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
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Keywords | 量子ビーム / 熱スパイク / 水の密度変化 / シミュレーション / DNA損傷 / イオンビーム / 分子運動 / 生物作用 |
Outline of Research at the Start |
量子ビームによって付与されるエネルギーの大半は熱に変換され局所的な高温状態(熱スパイク)が生じる。熱スパイクは生物作用に関与しないと一般的に考えられてきたが、その根拠は十分とは言い難い。本研究では、量子ビームによって誘起される熱スパイクに由来する圧力波がDNAに作用し、生物作用を左右する可能性を調べる。本研究は、量子ビーム生物作用の原因として電離・励起に加え新たなメカニズムを提唱する点で極めて独創的かつ挑戦的である。一方で、本研究の推進は、がん治療における患部への重粒子イオン照射をリアルタイムで観測する新規技術確立につながるため、治療の高度化に極めて大きな貢献をすることが期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
量子ビームによって付与されるエネルギーの大半は熱に変換され局所的な高温状態(熱スパイク)が生じる。熱スパイクは生物作用に関与しないと一般的に考えられているが、これまでの研究対象は主にタンパク質等であり、生物作用を左右する可能性についての検討は十分とはいえない。本研究では、近年向上が目覚ましい各種解析技術を組み合わせ、量子ビームによって誘起される熱スパイクに由来する圧力波がDNAに作用し、生物作用を左右する可能性を明らかにすることを目指して研究を進める。 本年度は昨年度に引き続き、鉄イオンビーム照射後の水の温度上昇による密度変化を測定するための超音波エコー測定による実験を進めた。超音波エコーシグナルが鉄イオンビームの飛跡の中のどこで生じているかに関する知見を得るために、電離箱を用いビームの進行方向での電離量を調べた。超音波エコーシグナルのビーム進行方向の発生位置を調べたところ、シグナルは、鉄イオンビームが停止する直前の最大のエネルギーを付与するブラッグピークの位置で最も高頻度に検出されることが明らかになった。このことから、超音波エコーシグナルはエネルギーの付与量と密接に関係することが示唆された。さらに、超音波エコーシグナルはブラッグピークの位置よりも深い位置でも観測されることもわかった。ビーム照射によって生じる破砕核に由来するシグナルが検出されていると考えている。 また本年度は、昨年度までに開発した、量子ビームのエネルギー付与による軌道付近の水分子の挙動を調べる分子動力学計算コードを用い、軌道付近の水の密度および温度変化を調べた。その結果、瞬間的に大きなエネルギーが局所的に付与されると、軌道付近の温度は上昇するとともに密度は低下するが、その範囲はナノメーターの領域であり、数十ピコ秒のオーダーで照射前の状態に戻ることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は量子ビーム照射後の水の密度変化を調べるための実験を本格的に開始し、エコーシグナルが主にブラッグピークで生じていることを明らかにした。また、開発したシミュレーションコードを使い、熱が与えられた後の水分子の挙動を調べた。しかしながら、量子ビーム照射実験施設(HIMAC)が電力削減のためマシンタイムの割り当てを削減したため、量子ビームによって照射される水の状態を変化させたときにエコーシグナルがどのように影響を受けるかを調べる実験を行うことができず、量子ビーム照射実験は当初の予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
量子ビームによって照射される水の状態を変化させたときエコーシグナルがどのように影響を受けるかを調べる実験を進める。エコーシグナルは、照射直後に生じたナノメーターのオーダーの空洞に水中に溶存する気体が入り込んだ気泡である可能性がある。そこで、重曹など水中の溶存気体を増やす操作を行い、シグナルの観測に影響があるか明らかにする実験を行う。また上記実験では、超音波の音圧、振動数、パワー等を変化させながら観測を行い、シグナルの実体についての知見を集める。一方で、分子動力学シミュレーションにより、量子ビームによって付与されるエネルギーが熱エネルギーとなって水に瞬間的・局所的に与えられた後の個々の水分子の挙動を調べる計算を進め、ビームの軌道周辺の圧力の変化について調べていく。 これらの実験および計算を進めることにより、量子ビーム照射後の水の分子運動に関する理解を深める。
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