Project/Area Number |
21K18281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 57:Oral science and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
天野 敦雄 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (50193024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保庭 雅恵 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (00303983)
坂中 哲人 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (90815557)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥25,870,000 (Direct Cost: ¥19,900,000、Indirect Cost: ¥5,970,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,450,000 (Direct Cost: ¥6,500,000、Indirect Cost: ¥1,950,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,450,000 (Direct Cost: ¥6,500,000、Indirect Cost: ¥1,950,000)
Fiscal Year 2021: ¥8,970,000 (Direct Cost: ¥6,900,000、Indirect Cost: ¥2,070,000)
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Keywords | 口腔マイクロビオーム / 生理活性メタボライト / メタボローム解析 / 口は消化器官 / エピジェネティクス解析 |
Outline of Research at the Start |
腸内細菌叢は第6の内臓と称され、ヒトの健康と疾患のほぼ全てに影響を及ぼす。食と腸内細菌叢の相互作用によって産生される多様な化合物(メタボライト)が、この機能の多くを担っている。口腔内でもこうした優れた生理活性をもつメタボライトが産生されている可能性がある。口は腸と同じように立派な消化器官であるかもしれないのだ。食物が口にはいるとすぐに食物は粉砕され唾液中の消化酵素のダイナミックな作用により分解を受ける。口腔細菌叢が唾液消化の前・後の食品成分を代謝し、生理活性メタボライトを産生している状況を解析し、「口から食べる」、「噛んで食べる」の意義を明確にする。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、食と腸内細菌叢の相互作用の結果として産生される生理活性メタボライトが、宿主の様々な生理機能や疾患傾向に影響することが見出され、研究者だけでなく社会全体の関心が高まっている。その一方で、消化器官の入り口である口腔には腸内に匹敵する豊かで複雑な細菌叢が存在するが、腸内と同様に摂食の過程で生理活性を有するメタボライトが産生されるかどうかは現在のところ不明である。 本研究では、摂食による食品と口腔細菌叢の相互作用の結果として産生される生理活性メタボライトを包括的に探索し、それらの物質と特定の口腔細菌との共起関係を調査するとともに、若年および高齢健常人、メタボリックシンドローム患者など、様々な背景因子を有する被験者について比較検討を行い、口腔細菌叢による生物的消化の差異が宿主の心代謝疾患リスクなどに及ぼす影響を明らかにする。さらに、口腔細菌叢による生物的消化と咀嚼機能との関係性を明らかにし、生物的消化の観点からみた口腔機能の重要性を解き明かす挑戦的研究である。 これまでに、摂食の過程において食品と口腔細菌叢の相互作用の結果として、どのようなメタボライトが産生されるかについて、メタボロミクスを用いた解析を実施し、いくつかの知見を得ている。また、次世代シーケンサーを用いたショットガンメタゲノム解析を実施し、口腔マイクロバイオームに関する組成と機能に関するデータを取得している。今後はマルチオミクス解析を実施し、メタボライト、口腔細菌、心代謝疾患リスクとの関係性を調査することで、口腔細菌叢由来の生理活性メタボライトを特定するとともに、in vitro微生物実験系を用いたバリデーション実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔細菌叢による生物的消化の可能性について、メタボライト・マイクロバイオームレベルでの解析を実施し、既にいくつかの知見を得ている。メタボロミクスについては、食品の咀嚼により産生されるメタボライトの探索と、摂食後に口腔内で変動するメタボライトを調査した。特に、摂食後6時間までのメタボライトの変動については、糖類とアミノ酸類で共通する変動パターンを認め、摂食を介した宿主と口腔細菌叢との複雑な相互作用によるメタボリックプロファイルの変動が示唆された。また、メタボリックシンドローム患者を対象に唾液メタボロームを評価し、心代謝疾患リスクと関連する複数の唾液メタボライトを明らかにした。さらに以前我々が開発した舌下線・顎下腺唾液を選択的に採取する方法を用いて、体循環から唾液中へ移行し、口腔細菌叢によって代謝されるメタボライト群を探索し、いくつかの候補物質群を特定した。これらの物質は疾患に伴い恒常的に体循環系から口腔内へと移行して口腔細菌叢に供給されていることから、食事由来のメタボライト同様、口腔細菌による代謝を経て生理活性メタボライトとしての機能を有する可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初計画通り研究を遂行する。特に、これまで注力してきたメタボローム解析に加え、次世代シークエンサーを用いた口腔細菌叢の構成および機能解析に本格的に取り組み、摂食における宿主・口腔細菌叢の相互作用をメタボライト・菌種レベルで解き明かすことを目標とする。特に、人によって異なる唾液の菌種構成の差異が、食事由来メタボライトの代謝や、生理活性メタボライトの産生にどのように影響するかを評価し、唾液細菌叢による生物的消化の実態を明らかにすることを目指す。さらに、心代謝疾患に伴い唾液中へ移行する体循環由来メタボライトに対する口腔細菌叢の代謝作用についても同様に評価し、疾患に関連したメタボライトが口腔環境に及ぼす影響や、新たに産生される生理活性メタボライトを探索する。最終的に、これら口腔独自の消化産物が全身の健康や疾患傾向にどのように影響するかを総合的に評価することで、唾液と口腔細菌叢が共働産生する口の栄養素・生理活性メタボライトの全貌解明に向けた新たな研究分野の展開を試みる。
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