Project/Area Number |
21K18378
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 3:History, archaeology, museology, and related fields
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中村 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (40403480)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 朋美 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (10570129)
正司 哲朗 奈良大学, 社会学部, 教授 (20423048)
飯塚 義之 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員研究員 (90804203)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
|
Keywords | 深層学習 / ガラス / 石製玉類 / 日本 / 韓国 / モンゴル / ヒスイ / 碧玉 / 化学組成 / 産地推定 / 玉類 / 考古資料 / 画像診断 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、ガラスや鉱物で製作された玉類の深層学習を用いた画像診断による簡易の色調、鉱物、産地の同定システムの構築を行う。異なる分析方法の成果を結合しつつ、表面情報(画像情報)を補い、深層学習によって同定システムの精度向上を試みる。最終的には同定プログラムをオンラインで公開し、他の研究者に利用してもらうと同時に、そのデータを基にした追加学習で機能向上を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、これまで収集したヒスイの岩石学的分析を分担者の飯塚義之氏に依頼し、その内容を整理した。代表者らが行っていた蛍光X線分析においても日本で産出するヒスイにはナトリウム(Na)が含まれてない一群があり、軟玉(Nephrite)が混じっていることが確認されていたが、この回の分析で岩石学的に明確になったといえる。かつては、日本列島の縄文時代を中心としたヒスイ製品は硬玉(jadeitite)だけと考えられてきたが、飯塚氏の一連の研究により、そのなかにも硬玉と軟玉があることがわかってきた。多角的なヒスイの分析はより重要性を増してきたといえ、本研究はその基盤となりうるものである。 ガラスに関しては、深層学習により色調によるAI判別の構築を進めてきた。しかし、ガラスのように、1個体のなかである程度幅のある色調を判別しようとした場合、現在保有しているハイパースペクトルカメラでは範囲が広すぎることが判明した。現在の範囲でとれている色調で、判別するシステム自体は構築できるものの、その確度に問題がある。Photoshopで色調を合わせて任意の範囲を取る方法も試したが、極小遺物を対象とする画像補正用カラーチャートを利用したとしても、ガラスの色調を完全に一つの基準で統一させるほどの精度は得られない。そのため、色調からのアプローチに関してはより高機能のハイパースペクトルカメラの導入後に進めるほかないという結論に達した。 現在は、モンゴル、韓国、日本で撮影と分析を終えた資料を入力しており、そのデータの統合を試みている。例えば、これまでは、特定の元素の分布による範囲区分によって、ガラスの種類を分けていたが、今後は統計的にその区分を判別できるようになると考えている。観察による製作痕跡の記述といった要素も含めて、より確かな玉類の区分の提示を目指したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要でもふれたように、当初考えてきた色調を中核として区分に関しては現在の機材では困難であることがわかった。高性能の機材で撮影を行った場合、深層学習用のデータベースとシステム自体の構築は可能であるが、通常のデジタルカメラで撮影したものを、データベースに参照させて簡易同定に利用することは難しくなる。行政発掘の報告の際に簡略的な同定を行う場合、色調の正確さを求めるよりも、ある程度分類に即した色調名称、形状、孔の観察情報を参照させるシステムのほうが適していることがわかった。高性能スペクトルカメラでの撮影に関しては、別の研究課題で進め、再度応用可能かを確かめる予定である。 研究の進展から、以上のような問題点と方向転換を導きだせたのも、一つの成果であり、現在、新たな方向で進めている。そのなかで、ガラスの流通を考える際に重要な草原ルートの資料が不足しているため、追加でモンゴルのナトロンガラス、植物灰ガラスの蛍光X線分析、撮影、観察が必要になっている。これについては来年度に行う予定であり、それによって概ね基礎データがそろう見込みとなっている。 石製玉類の岩石学的データはそろったので、これについては分担者と相談して、どのようなかたちで成果を示すかを相談中である。原石と製品を対照させうるものとなっており、日本列島の玉類の研究においては大きな意味があると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、分析が進展することによって大きく方向転換することになったが、これまで述べたように岩石学的なデータ所得に関しては、当初の予定どおり進展しており、大きな問題はない。ガラスに関しては、これまでの研究によって、観察データ、区分された色調データ、写真はそろっており、入力を続けることで、上述したシステムの構築は進められると考えている。 ガラスの資料不足についてもすでにふれたところであるが、こちらもモンゴル科学アカデミー考古学研究所と協定を結んでおり、2024年9月以降に前1世紀~後1世紀の匈奴墓から出土したガラス類の分析調査を行う予定をすでに組んでいる。この種のガラスは大興安嶺を越えて東南方向にあり遼東山地部でも出土しており、可能であればデータベースに組み込みたいと考えている。 一方、分担者による分類区分システムを来年度に組み上げる予定であるが、それ以外にも玉類のデータベースとして価値があるので、電子書籍としてアクセスできるようにしたいと考えている。ただし、原石などは所有者の権利などがあるため、この点をクリアして、最終報告にのぞみたい。なお、画像補正用カラーチャートの色調マッチングは玉類の色調同定には不適格であったが、他の研究でも試みられたように、土器の色調区分には十分利用できた。こうした事例も含め、本研究の副産物が応用可能かについても整理を進めたい。
|