Project/Area Number |
21K18414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 5:Law and related fields
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
今井 猛嘉 法政大学, 法務研究科, 教授 (50203295)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | AI / コンピュータ・ウイルス / SNS / 侮辱 / 自動運転 / レベル4 / 国際刑法学会 / 因果関係 / ベイズ統計 / アルゴリズム / 法的責任 |
Outline of Research at the Start |
第1に、トロリー問題の多角的な検討を行う。トロリー問題は、法哲学、社会学でも議論が盛んであり、そこから得られる知見が、刑事責任論にどのような変容を迫るものであるかを整理する。 第2に、トリアージュ問題を、限りある医療資源の最大活用という法と経済学の視点から検討する。ゲーム理論を用いた分析が進む英米での議論から、AIによるデータ処理の効果的制御の可能性を検討する。 第3に、トロリー問題とトリアージュ問題の検討を踏まえ、義務論的発想に深く根付いた応報刑論に替わる、行為功利主義的発想からの抑止刑論を展開し、その際に要求される刑事責任の本質について新たな視点を確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
人工知能(AI)と刑法理論に関連する、以下の検討を行い、その成果の一部を国際的に公表した。 第1に、コインハイブ事件の最高裁判例につき、コンピュータ・ウイルス罪の成否を検討した。同事件では、ネット利用者の明確な承諾なくして、PCのCPUを利用する行為がウイルスの使用に該当する違法なものかが問われた。最高裁は、ネット上では、そうした行為であっても、実質的被害が小さいものは、広く利用されている実態があることにも着目して、使用罪の成立を否定した。この判断は、日常生活の隅々にまでAIの利用が広がっていく際に、どの程度、明確な法益侵害が認められなければ、刑罰権行使が許されないのかという重要な問題を提起している。この視点は、本研究にとって重要な意味を持っている。 第2に、ネット上でのSNS等を利用して他人を侮辱する類型が増加することを踏まえ、侮辱罪の法定刑の引上げがなされた。この法改正の意義につき、ネット上での情報拡散の容易性と被害拡散の可能性、これに対する効果的な抑止効果を及ぼすべき刑事制裁について、検討を加えた。その意義は、コンピュータ・ウイルスの刑事的抑止を考える際の意義と同様のものである。 第3に、レベル4の自動運転技術の利用を許可した2022年改正道路交通法の意義を多角的に検討した。自動運転を可能にするアルゴリズムは、AIで制御されるため、自動運転車の刑法的評価は、最終的には、AIの刑法的評価に直結している。この点を明確に意識した検討を継続した。 第4に、以上の国内法に係る研究を踏まえ、国際刑法学会にて、日本刑法とAIとの関係につき、日本代表として論文を提出し、国際的議論に参画した。 このように、AIに係る刑法適用が問題となる事例を、近時の動向を踏まえて、幅広く検討し、その結果を論文として公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AIを用いた制度やサービスは、日々、開発され、また利用形態が変化しつつある。2022年度は、このAIを巡る特徴に着目し、特に注目されるケースとしてコンピュータ・ウイルスへの対応、SNSを用いた侮辱的行為に対する対応、自動運転車のレベル4技術の安全確保と刑法との関係を研究し、人工知能(AI)と刑法理論に関係する検討を深めることができた。そして、2022年時点での理解を要約する形で、国際刑法学会にて、AIと刑法の関係に関する日本の状況を報告し、他国との比較の基礎を固めることができた。 これらの研究(日本国内の状況を、国際的議論の傾向の中で位置づけつつ、日本国内での議論を深めること)は、本研究の取りまとめに向けて、有益なものであったと思われる。 以上により、本研究は、概ね順調に推移しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年の研究方法を踏まえ、これを更に深め、具体的な事例の評価を行いつつ、AIと刑法の基本的な在り方に係る理論的視点を明確にする。 具体例としては、国内外での主要な実践的課題である自動運転車(レベル4技術)の利用に伴う事故に係る刑事責任の在り方につき、更に検討を加える。 その際、トロリー問題に対する法哲学的分析も考慮しつつ、刑法の在り方に関する理解の相違が、どのような結論を導きうるかという点、及び、刑事過失の理解の再確認を行う(数理法務と法と経済学の手法を活用し、非規範的な刑事責任論の確立をも目指す)。その研究の成果は、国際刑法学会等で、引き続き公表し、国際的な観点から広くAIの刑事責任を検討する。またChat GPTの悪用によるデータの改ざん等に対する刑事制裁の可能性についても検討を加え、今後の議論の基礎を形成することを目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)