リスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力を統一した意思決定理論の実験的検討
Project/Area Number |
21K18436
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 7:Economics, business administration, and related fields
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
川越 敏司 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (80272277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧澤 弘和 中央大学, 経済学部, 教授 (80297720)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 意思決定理論 / 行動経済学 / 実験経済学 |
Outline of Research at the Start |
リスク下での選択や異時点間の選択、さらには他者と交渉の分け前を配分する際の社会的選好については、これまでも行動経済学においてそれぞれ個別に分析が行われてきたが、現実にはこれら3者は相互に依存しているのが通常である。そこで、異なる時期に得られるリスクを伴う利益を他者に配分するといった、これら3者すべてがかかわるような意思決定状況を想定した理論的枠組みを開発し、実験室実験を通じてその行動上の法則性を探ることが本研究の目的である。
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Outline of Annual Research Achievements |
リスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力に関するこれまでの研究を総合し、これらの選好の特徴を統一的にとらえることのできる意思決定の総合理論を開発することを目的とした実験室実験を実施した。なお、コロナ禍のため実験はオンラインで実施した。 実験では、リスク選好と時間選好、リスク選好と社会的選好、時間選好と社会的選好、そしてリスク選好・時間選好・社会的選好の3つが関係する設問を被験者に回答してもらった。それに加えて、被験者の認知能力を測定した。 実験の主たる目的は、「属性間の独立性」が成り立つかどうかを検証することにあった。例えば、リスク選好と時間選好が関わる問題で、現時点で確実に1000円を受け取ることを50%の確率で1万円を受け取るくじより好む人は、3か月であっても1000円を受け取ることを好むというように、一方の属性の変化が他方の属性に関する選好には変化をもたらさないというのがその定義であるが、実験ではリスク選好と時間選好、リスク選好と社会的選好の間に有意な相関が見られた。その上で、リスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力を統合した新しい効用関数を定義し、それに基づいたプロビット回帰分析により、実験データを分析した。この結果は行動経済学会において発表された。 また、「属性間の独立性」と関連が深い「選好の安定性」とは、ある時点で測定された選好と別の時点で測定されたものとの間には著しい違いが見られるという現象であるが、こちらについては、最近研究が進んでいるunawarenessという概念によってモデル化できることがわかった。現在、そのモデル化に従い、予期せぬショックがあった場合に選好が変化するかどうかについての実験室実験を計画している。 行動経済学上の発見について再現性がないという「行動経済学の死」問題については、実施したシンポジウムの内容を書籍化する計画が進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、リスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力に関するこれまでの研究を総合した意思決定の総合理論の開発という当初の目的に関しては、新しい効用関数のモデル化を行い、実験室実験を行い、そのデータを分析して論文にまとめ、行動経済学会で発表を終えた後に学会誌に投稿を済ませており、当初の計画以上に研究が進んでいると言える。 次に、「選好の安定性」についても、なんらかの予期せぬ外生的なショックの前後で選好が変化する可能性を分析可能なuawarenessという概念を基に理論予測を立て、実験実施する準備ができた。この点からも本研究課題は予定以上に進展しているとみている。 最後に、行動経済学上の発見について再現性がないという「行動経済学の死」問題については、すでに実施したシンポジウムの内容を書籍化する計画が進んでおり、こちらも着実に成果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本研究の当初の課題であるリスク選好・時間選好・社会的選好・認知能力に関する意思決定の総合理論の開発に関しては、すでにモデル化と実験室実験によって得れらた基データの分析を終え、その成果を論文としてまとめて学会誌に投稿済みである。今後は、査読結果を基にさらにモデルを精緻化していくことを予定している。 次に、「選好の安定性」については、unawaness概念による予想を基にした実験をすでに計画している。その実施については、本年度はコロナ禍の影響があって十分な数の被験者が集まらず実施を見送ったが、次年度には実施可能の予定である。 最後に、「行動経済学の死」にまつわる研究の再現性問題については、すでに実施したシンポジウムの内容を書籍として出版する作業に具体的に取り掛かる。 今年度は引き続き、これら3点の研究課題を順次進めていくつもりである
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)