高齢者ボランティア活動のネガティブ効果とその要因: 社会参加のダークサイドに挑む
Project/Area Number |
21K18470
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 8:Sociology and related fields
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
藤原 佳典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 副所長 (50332367)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 陽 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 主任研究員 (90727356)
高橋 知也 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90813098)
西 真理子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (70543601)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
|
Keywords | ボランティア / 社会参加 / ネガティブな側面 / 心理的負担感 / 苦慮体験 |
Outline of Research at the Start |
高齢者のボランティア活動で、心理的負担やストレスなどのネガティブな効果が生じるケースが散見される。しかし、ボランティア活動のネガティブな影響に着眼した研究は見られない。ネガティブ要因を除くことが出来れば、高齢者にとって望ましい互助・共助のあり方を保健福祉施策に反映できる可能性がある。 そこで、本研究では、積極的にボランティア活動を行っている高齢者に対するアンケート調査・インタビュー調査を通じて、ボランティア活動のネガティブ要因・事例の収集と、ボランティア活動ネガティブチェックリストの作成・検証をおこない、高齢者のボランティア活動のネガティブな側面を客観的に把握できる評価尺度の作成を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
過去の研究でボランティア活動に参加する高齢者は非参加者に比べて生活満足度や主観的健康感が高いが、気が進まないのにボランティア活動に参加しても健康維持に寄与しないことを示した。そこで、ボランティア活動のネガティブな側面が心身の健康や、活動意欲の低下から活動中止に至る機序を明らかにするためのボランティア活動ネガティブチェックリスト(以降、ネガティブCL)の作成を試みる。 2022年度は第1次予備調査として2021年度に実施したNPO法人りぷりんと・ネットワークに所属する会員を対象とした質問紙調査(配布:453名、回収:404名、回収率:89.2%)の分析を進めた。量的分析の結果から、周囲の勧めで参加した者は、負担感を抱えやすく、余暇時間の充実を目的に活動に参加している者は、負担感を抱えにくい可能性が示された。周囲の勧めという外発的動機が、内発的動機に移行せず、活動が負担になっていると考えられる。一方で、時間的余裕がある人は、負担を感じるリスクが低いことが示された。自由記述内容の質的分析の結果からは、ボランティア活動の負担感の内容は、集団に関係なく負担に感じる個人的な要因と、集団ならではの負担感があることが明らかとなった。個人的な要因には、活動との間で発生する葛藤や不一致感が共通していた。集団的な要因には、集団との関係で自己コントロール感が低くなる体験が共通していた。 次に、2021年度の質問紙調査の自由記述の内容から、個人要因6領域、集団要因4領域、42項目のアイテムプールを作成した。各アイテムのワーディング等は心理学系研究者4名及び有識者のチェックを経たのち、2022年12月~2023年3月にNPOりぷりんと・ネットワークに所属する会員を対象に質問紙調査を行った(配布数:527名、回収:473名、回収率89.8%)。現在、データベースの作成及び分析の最中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第2次予備調査として2022年度に予定していた約50名の高齢者を対象とした半構造化面接調査の実施が新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い遂行出来ない状況となった。 そこで2022年度は2021年度に実施した質問紙調査の自由記述の内容から広く高齢者が普通のボランティア活動で感じているネガティブな側面の収集に努め、個人要因6領域、集団要因4領域、計42項目のアイテムプールを作成した。作成したアイテムプールは心理学系研究者4名及び有識者によりワーディング等のチェックを行い、ネガティブCLの信頼性・妥当性の検証に向けて2022年12月から2023年3月にかけて郵送法による質問紙調査を実施した。調査対象者は、2021年度に実施した質問紙調査と同様に絵本読み聞かせボランティア団体で形成するNPO法人りぷりんと・ネットワークに所属する会員527名とし、473名(回収率89.8%)からの回収を得た。現在、データベースの作成を進めている段階にある。 質問項目は、ネガティブCL(素案)、ボランティア活動への負担・不安・不満、ボランティア活動の内容、活動の期間、頻度、活動団体における役割(代表・役員等)、活動組織の運営状況、基本属性、NEO生活検査、抑うつ傾向、精神的QOL、心理的ストレス反応尺度、健康度自己評価、心身機能、既往歴、生活習慣等とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度においては、2022年度に実施した質問紙調査のデータベースの作成及び、分析を実施する。得られたデータを用いて、探索的因子分析により、ネガティブCLの下位尺度を構成し、α係数の算出により、信頼性を検討する。さらに、本尺度の基準関連妥当性を検討するため、精神的健康の既存尺度(SRS-18、GDS-15,WHO-5等)との関連も検証する。その後、共分散構造分析により、「ボランティア活動のネガティブな状況」が健康アウトカムに影響する機序を説明し、「ボランティア活動ネガティブ要因-健康関連モデル」の形成を試みる予定である。 また、2021年度、2022年度の質問紙調査回答者の中で同意を得られた方を対象に、半構造化面接法によるインタビュー調査を実施する。調査の対象者は、現在のボランティア活動に対して①負担・不満・不安などネガティブな要因の強い人、②ネガティブ要因により活動辞退意向のある人、③ネガティブ要因により過去辞退経験のある人50名とする。インタビューの内容を質的に分析し、「ボランティア活動のネガティブな状況」が健康アウトカムに影響する機序について概念及びプロセスを明らかにすることを試みる。量的調査結果及び質的調査結果を統合させ、混合研究法による「ボランティア活動ネガティブ要因-健康関連モデル」を示す予定である。
|
Report
(2 results)
Research Products
(2 results)