Project/Area Number |
21K18598
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 13:Condensed matter physics and related fields
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大熊 哲 東京工業大学, 理学院, 教授 (50194105)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 超伝導渦糸 / 非平衡相転移 / クロッギング転移 / 可逆不可逆転移 / 走査トンネル分光 / アモルファス超伝導膜 / レオロジー / 2次元粒子系 / アモルファス膜 / ディピニング転移 / 臨界緩和 |
Outline of Research at the Start |
乱れた基板上に置かれた多粒子系の, 運動によって引き起こされる秩序化や無秩序化は, 新しい非平衡現象・レオロジーの観点から注目されている。本研究は多くのパラメタを制御可能な超伝導渦糸系を実験系とし, 自然界にも広く遍在する非平衡現象や相転移の解明, 特にレオロジーへの適用を行うため, 相転移を検出する巨視的輸送測定と走査トンネル分光による渦糸の微視的配置観察を同時に実現できる装置を開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
乱れたピン止めポテンシャル基板上に置かれた多粒子系の, 運動によって引き起こされる秩序化や無秩序化は, 新しい非平衡現象・レオロジーの観点から近年注目されている。本研究は, 多くのパラメタを制御でき理想的な2次元粒子系とみなせる超伝導渦糸系を用いて, 自然界に広く存在する非平衡現象, あるいは直流駆動による非平衡ディピニング転移や動的秩序化転移, 交流駆動による可逆不可逆転移といった非平衡相転移を探求すると共に, レオロジーへの適用を目指す。このため, 非平衡相転移を検出する巨視的輸送測定と渦糸の微視的配置を観察する走査トンネル分光(STS)を同時に実現可能な走査トンネル顕微鏡の開発を進めている。これまでに4端子輸送測定と運動を凍結させた渦糸の実空間観測が可能となった。ところが, これまでの実験では観察できる渦糸数が不足していた。そこで昨年度は, より多くの渦糸がSTS視野に含まれる高磁場での実験ができるよう実験条件の改善を図った。超伝導アモルファスMoxGe1-x膜表面には保護膜として厚さ数ナノメートルの銅薄膜を成膜しているが, この膜が厚いと超伝導近接効果が弱まり隣接する渦糸を区別できなくなる。一方, 薄いと平坦性や保護効果が劣化する。銅の膜厚の最適化を行った結果, これまでの数倍の高磁場下でも個々の渦糸を分離できるようになり, 渦糸密度も同程度に増加させることに成功した。この試料を用いることにより, 直流駆動力増加に伴う渦糸フローの構造変化が観測可能となった。さらに,可逆不可逆転移の制御パラメタである交流せん断振幅を増加させると, 格子性を表す配位数6の渦糸粒子の割合やハイパーユニフォーミティが可逆不可逆転移点に向かって単調に増加し, 不可逆相で緩やかに減少することがわかった。この結果は, 可逆不可逆転移点で秩序度が最大になるという理論的予想と一致する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非平衡相転移を検出する巨視的輸送測定と走査トンネル分光による超伝導渦糸の微視的配置観察を同時に実現する極低温高磁場走査トンネル顕微鏡は, 我々が知る限りこれまでに例がない装置である。この装置と, 最適化された銅の保護膜をつけたアモルファス超伝導膜試料を用いて, これまでに直流駆動力増加に伴う, 乱れたプラスチックフローから秩序ある格子フロー状態への渦糸の動的構造変化を実空間観測することに成功した。さらに, 交流駆動振幅増加に伴う可逆不可逆転移の転移点付近で, 渦糸格子の秩序度, あるいは渦糸配置の秩序度を反映したハイパーユニフォーミティが最大となることを見出した。この結果は, 計算機シミュレーションや巨視的輸送測定から予想はされていたが, 本研究によって, 初めて微視的実空間像からの裏付けがなされた。これらの成果は, これまでの超伝導渦糸系の実験における唯一の課題であった「実空間に関する情報」が得られるようになったという観点から, 大きな実験的貢献と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はこれまでの実験の課題であった, 渦糸配置の画像中の渦糸の数を増やすことに成功した。そこで, 今後は順次, 以下の測定に取り組む。 (1)まず, 直流駆動力増加に伴う, プラスチックフローからスメクチックフローへの動的秩序化転移の初の実空間観測を行う。さらに, 本研究と並行して進めている, 電流の代わりに熱流を用いる熱電効果(ネルンスト効果)測定を進行させる。これまでに熱電効果によって, 渦糸の液体状態を示す超伝導の位相ゆらぎと常伝導相における振幅ゆらぎの観測に成功している。これらの巨視的熱輸送測定とSTSによる微視的実空間観測の結果の比較は興味深い。しかし, 両測定を同時に行った例はないため, それを実現する。 (2)つぎに, 交流駆動による可逆不可逆転移の実験を進展させる。交流駆動振幅の関数として, 渦糸配置の秩序度を表すハイパーユニフォーミティが変化する様子をSTSの実空間像によって調べ, 転移点で秩序度が最大になることを明確に示す。この成果は, 乱れの中から秩序がいかに生まれるかという基本問題の解明につながる。さらに, 最近我々が輸送測定によって見出した, 可逆相内での2つの運動状態の存在, すなわち終状態で衝突がまったく起こらないポイントリバーサル相と, 系内のどこかで衝突が起こっているループリバーサル相という2つの相の存在を, 実空間観測の結果に基づき検証する。 (3)最後に, 輸送測定でその兆候をつかんでいる直流フローのクロッギング(目詰まり)現象の直接証拠を, STSによる微視的渦糸像から得る。さらに, 直流に交流を重畳させた実験を輸送測定とSTS測定で同時に行うことにより, 理論で予想されている交流重畳によるクロッギングの軽減と流動化の制御の検証を行う。流体の目詰まり現象は身の周りに広く見られる現象であり, その制御は産業や医療等の広い分野に貢献する。
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