Project/Area Number |
21K18800
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 26:Materials engineering and related fields
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
増野 敦信 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (00378879)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
|
Keywords | 孤立構造ユニット / XAFS / Raman散乱分光 / 無容器法 / ガラス構造解析 |
Outline of Research at the Start |
無容器法で合成した様々な高秩序ガラスに対して,「原子配列の秩序度」という概念を導入し,実験的裏付けのある構造モデルを利用した定量化パラメータを導出する.これにより,これまで個別の高秩序ガラスごとに議論されていた構造の特異性を,定量的に相互比較し,原子配列と物性の相関を探ることが出来るようになる.また数値化された秩序度を用いれば,注目しているガラスの秩序性をどこまで上げられるかが推定できる.本研究では実際にガラスに高圧を印加することで,秩序度の制御可能性を探る.
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,原子配列に高い秩序性のあると想定されるガラスを合成し,その秩序性を定量評価する方法論を構築することである.秩序性の高いガラスを得るためには,従来型ガラスのようなネットワーク成分を含まない組成を無容器法で合成したり,あるいはガラスを高温高圧で後処理したりする方法が有効である.秩序性を定量評価する実験的手法としては,回折や光学吸収スペクトルなどがあり,解析的手法としてはパーシステントホモロジーや還元原子配列マップの利用がある.今年度は高秩序ガラスとして新たに,希土類モリブデン酸塩ガラスと,高密度シリカガラスを得た.無容器法で合成した希土類モリブデン酸塩ガラスについては,ガラス化範囲を確定し,熱物性や密度,光学スペクトルを取得した.Raman散乱やMo K-edge EXAFS,La L3-edge XANESなどの分光学的手法によって構造解析を行ったところ,同組成の結晶La2Mo3O12とほぼ同じ原子配列を有していることが明らかとなった.結晶中のMoは孤立したMoO4四面体として存在していることを考えると,希土類モリブデン酸塩ガラスでもMoO-Moのようなネットワークは存在していないことが強く示唆される.放射光X線回折実験で得られた全相関関数においても,ガラスと結晶の原子配列類似性を強く示唆する結果を得た.従来のガラス科学には当てはまらない興味深いガラスと言える.放電プラズマ焼結SPSで合成した高密度シリカについては,その原子配列の秩序度が,SPSのプロセスや試料中の位置に依存することがわかった.さらに還元原子配列マップを描画するソフトウェアの開発も進んでおり,これまでの処理時間を大幅に短縮することが可能となった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,まずはこれまでに合成したガラスの中で高い原子配列秩序性を有すると思われるものの秩序度を,実験や新しい解析手法によって定量的に調べることとしていた.しかし今年度は新しいガラスとして希土類モリブデン酸塩ガラスが得られ,予備的実験から,その原子配列は同組成の結晶に類似していることが推定されたことから,このガラスの構造解析に重点を置いて研究を進めた.興味深かったのは,La2Mo3O12という組成の結晶に対して,無容器法を用いれば同組成でもガラス化したことである.同じ組成でもプロセスの違いでガラスと結晶に分かれるのは,両者が近い自由エネルギーを有していることを示唆し,ここから原子配列の類似性も期待された.実際,Raman散乱とMo K-edge XAFSの実験では,ガラスのスペクトルは結晶のスペクトルをわずかにブロードにしたものであった.可視域での光透過スペクトルから見積もられたガラスの光学バンドギャップは,結晶よりもわずかに小さかったが,これも原子配列に乱れが導入された結果であるといえる.放射光X線回折実験から得られた全相関関数では,Mo-O結合距離が見積もられたが,これもガラスと結晶はほぼ同じであった.結晶ではMoO4四面体が孤立している.ガラスでも結晶と同様の,非常に高い秩序性をもった原子配列となっていることが実験的に明らかにできた.高秩序ガラスを新たに合成できたことは,本研究を強く推進させる起点となる. また本来は低充填密度で秩序性の低いシリカガラス粉末に対して,放電プラズマ焼結を行うと,高温高圧大電流の条件では,高密度化が実現されていた.このとき試料の中心か外縁部かによって高密度化の程度が異なることが,様々な分光学的手法によって明らかとなった.比較的応用に近いプロセスであるSPSでも高密度化が実現し,その空間的な揺らぎに関する知見が得られたことは興味深い.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに高秩序ガラスの合成に関しては大きな進展があった.希土類モリブデン酸塩ガラスという新しい系の他にも,La2O3-Al2O3-Ga2O3三元系やMgO-Al2O3-SiO2三元系においても広いガラス化範囲を確定させることができた.それらの充填密度は非常に高く,そのことと光学特性,機械特性,熱輸送特性とが強く相関していることも明らかになってきた.次のステップとして,放射光X線回折,中性子回折,Raman散乱分光,XAFS,固体NMRなどを駆使して,実験データにおいて秩序性を評価できるパラメータを抽出し,そこからガラス系ごとに秩序度を定量評価することになる.また計算の利用も重要である.構造解析の実験データを再現するように,分子動力学シミュレーションやRMC,第一原理計算によって構造モデルを作製する.高い信頼性が担保された構造モデルの原子配列に対して,パーシステントホモロジーや還元原子配列マップを適用する.対象となるガラス系は多いものの,今年度までにどちらの手法に関しても解析ソフトウェア開発が大きく進展したため,データ処理に要する時間がこれまでに比べて大幅に短縮されると期待できる.とくに従来は非常に長い時間を要していた逆解析が,現実的な時間で行えるようになったことから,新しいタイプのデータの量産が見込める.そのため,今年度はある程度網羅的な計算と解析に挑戦して,データの蓄積を目指すことを予定している.一方で研究計画に記載した真空紫外(VUV)域での光吸収スペクトルの取得に関しては,これまで人的資源の問題から放射光実験ができないという課題があった.今年度以降,体制を整えて高秩序ガラスのVUV光吸収スペクトルの取得に臨む計画である.
|
Report
(2 results)
Research Products
(43 results)