鉄によるエピゲノム制御 -母体の鉄量変動は胎仔のエピゲノムを変えるのか?-
Project/Area Number |
21K19221
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 43:Biology at molecular to cellular levels, and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
立花 誠 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (80303915)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | エピゲノム / 鉄 / 脱メチル化 |
Outline of Research at the Start |
Deferoxamine (Dfo) は、鉄過剰症の治療薬として用いられている鉄キレート剤である。これまで私たちは、Dfoを含む培地でマウスES細胞を24時間培養すると、ヒストンH3の9番目のリシン(H3K9)をはじめとするヒストンH3のメチル化レベルが大幅に亢進すること、さらにDNAのメチル化レベルも有意に亢進することを見出した。本知見に基づき、妊娠期のマウスにDfoを投与し、一過的に鉄が欠乏した状態にした際に、胎仔のゲノムインプリンティングの消去と性決定が正しくおこなわれるのかについて明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
DNA/ヒストンの脱メチル化を触媒する酵素反応(酸化反応)には、補因子としての二価鉄(Fe2+)が必須である。私たちはごく最近、培養細胞では、DNAとヒストンのメチル化が培地中の鉄量に依存して変動することを見出した。この現象は、DNAの脱メチル化に関わるTetファミリー分子、およびヒストン脱メチル化酵素であるJmjCドメインファミリー分子の活性が、培地に含まれる鉄量によって律速されることを意味する。さらにこの実験結果は、生体内においても、鉄の不足や過剰な状態は細胞のエピゲノムを変えうることも容易に連想させた。胎仔(児)期におきる性決定やゲノムインプリントの消去には、上記のエピゲノム酵素群が深く関与する。このような知見に基づき、妊娠期の母体の鉄の代謝変動が胎仔エピゲノムに及ぼす影響を、マウスモデルで検証する。私たちは、受精後10.5日のマウス胎仔の性的に未分化な生殖腺を摘出し、in vitroで器官培養を行って性分化を観察することができる実験系を開発した。この実験系で48時間培養すると、XY生殖腺は精巣様の構造体を作り、同様にXX生殖腺を培養すると、卵巣様の構造を作る。Deferoxamine (Dfo) は、鉄過剰症の治療薬として一般的に用いられている鉄キレート剤である。2022年度では、未分化生殖腺の器官培養系でDfoを添加すると、XY生殖腺の精巣への分化が阻害されることを見出した。E10.5胎仔から摘出したXY生殖腺を24時間培養すると、性決定遺伝子Sryの発現が観察できる。ことろがDfo存在下でXY生殖腺を培養すると、Sryの発現が見られないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受精後10.5日のマウス胎仔の性的に未分化な生殖腺を摘出し、in vitroで器官培養を行ってその性分化を観察することを可能とする実験系を開発したことは、大きな成果である。さらに、この実験系を用いてXY生殖腺を48時間培養すると精巣様の構造体を作ることを見出した。一方で、鉄キレート剤であるDfoの存在下で同様の器官培養実験を行うと、精巣様構造が形成されないことも明らかにした。この研究結果により、鉄の不足(貧血状態)はマウス生殖腺の性決定や性分化を阻害することが示された。加えて、Dfoの存在下で、XY生殖腺を24時間器官培養すると、コントロールでみられるようなSryの発現の活性化がほとんど観察されなかった。このことを考えると、マウス生殖腺の性分化における鉄の作用点は、Sryの活性化である可能性が高い。このような研究成果は、私たちの仮説である、「生体内の鉄量がマウスのオス化の律速要因である」を裏付けるものであったため、研究が順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究成果により、in vitroの器官培養実験では、貧血状態が生殖腺のオス化(精巣への分化)を阻害することが明らかになった。次は、in vivoでの検証、すなわち妊娠期の母親を貧血状態にした際に、胎仔の性分化、あるいは胎仔の生殖腺のインプリントの確立がどのように影響を受けるのかを明らかにする必要がある。いくつか行った実験により、胎仔が性決定の時期にDfoを母親に投与しても、当該胎仔が鉄不足に陥らないとの結果が得られた。この理由として、母親の肝臓やその他の臓器に蓄えられた鉄が放出されることで、一過的な鉄不足が解消されている可能性が考えられた。また、胎仔の細胞に蓄えられた貯蔵鉄が放出させることも考えられた。この問題を解決するためには、交配する前の母親に、長期にわたって鉄欠乏食を給餌し、慢性的な貧血状態にしておく必要があるとの結論に至った。2023年度は、この研究を実行する。母親を慢性的な貧血にした際には、自然交配の効率の低下、胚の着床率の低下、産仔の食殺、などの影響が出る可能性が大いに考えられる。このため、鉄欠乏食を与える期間は、入念な条件検討が必要である。
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Report
(2 results)
Research Products
(22 results)
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[Journal Article] Dynamic erectile responses of a novel penile organ model utilizing TPEM.2021
Author(s)
Hashimoto D, Hirashima T, Yamamura H, Kataoka T, Fujimoto K, Hyuga T, Yoshiki A, Kimura K, Kuroki S, Tachibana M, Suzuki K, Yamamoto N, Morioka S, Sasaki T, Yamada G.
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Journal Title
Biol Reprod.
Volume: in press
Issue: 4
Pages: 875-886
DOI
Related Report
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Generation of ovarian follicles from mouse pluripotent stem cells2021
Author(s)
Yoshino Takashi、Suzuki Takahiro、Nagamatsu Go、Yabukami Haruka、Ikegaya Mika、Kishima Mami、Kita Haruka、Imamura Takuya、Nakashima Kinichi、Nishinakamura Ryuichi、Tachibana Makoto、Inoue Miki、Shima Yuichi、Morohashi Ken-ichirou、Hayashi Katsuhiko
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Journal Title
Science
Volume: 373
Issue: 6552
Pages: 282-289
DOI
Related Report
Peer Reviewed / Open Access
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