Project/Area Number |
21K19761
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 60:Information science, computer engineering, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺師 弘二 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (80466804)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 量子機械学習 / 量子ダイナミクスシミュレーション / 量子状態制御 / 量子コンピュータ / 機械学習 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、量子コンピュータを「目的とする量子系を実現する」ための量子状態生成マシンとして活用し、全体の量子系が一つの「高位量子計算機」として機能する仕組みを実現する。その実現に向け、量子状態の機械学習と量子微分解析による状態制御を可能にする計算モデルを提案する。この高位量子計算機は、量子系が持つハミルトニアン構造の決定や特定の量子状態を生成することができるため、量子科学の方法論にブレークスルーをもたらす可能性がある。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、NISQコンピュータを「目的とする量子系を実現する」ための量子状態生成マシンとして活用し、全体の量子系が一つの「高位量子計算機」として機能する計算モデルを提案することである。そのために、1)ある量子物理系とその状態関数、2)量子状態を学習するためのNISQマシンの二つを開発の土台とする。令和4、5年度を通して、「量子データを入力とする量子機械学習(QML)」の高度化と「量子微分解析と状態制御を行うモデル」の初期設計を進めた。 量子データ入力のQMLでは、素粒子物理モデルの量子ダイナミクスシミュレーションと横磁場イジング模型の時間発展シミュレーションによって量子状態を生成し、その状態から「量子畳み込みニューラルネットワーク」(QCNN)を使って状態の相識別や粒子間の結合定数の予測、フェルミオンのフレーバー識別が可能なことを示した。これらの結果は査読誌に出版済である(L. Nagano et al., Phys. Rev. Res. 5, 043250 (2023))。 量子微分解析が可能なモデルとして、ニューラルネットワークを用いた強化学習と微分可能プログラミングに基づく状態制御のモデル(F. Schafer et al., Mach. Learn.: Sci. Technol. 1, 035009 (2020))を検討し、シンプルな1 量子ビット系で状態制御が可能なことを数値的に確かめた。現在は、先行研究(X. Wang et al., AVS Quantum Sci. 5, 043801 (2023))を元に、複数の量子ビットからなる多体スピン系に対して、そのハミルトニアンの時間発展状態を状態制御を使ってシミュレートする手法の研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、「量子データを入力とする量子機械学習」を実現するために、1)の量子物理系として量子シミュレーションによる量子状態の生成を行う。素粒子物理の量子ダイナミクスシミュレーションでは、空間1次元のU(1)格子ゲージ理論(シュウィンガー模型)での基底状態やその離散Z2ゲージ理論での時間発展状態等を生成し、その状態を入力とするQMLの学習に成功している。より非自明な時間発展状態の生成を目指し、量子回路パラメータの時間発展による状態生成の方法を検討したが、この方法は学習に大きなコストがかかることが明らかになった。そこで状態生成のモデルは現行の手法に戻し、2)の量子微分解析と状態制御の手法を高度化する研究を進めている。 昨年度から、先行研究(F. Schafer et al., 2020)をベースに古典強化学習の手法を使って量子状態を所望の状態へと時間発展させることができるか検討を進め、この手法によって1量子ビット系の状態制御が可能なことを数値的に確かめた。現在は、先行研究(X. Wang et al., 2023)を元に、ハイゼンベルク模型や1次元格子ゲージ理論など、複数の量子ビットからなるスピン系のハミルトニアンによる時間発展を、量子デバイスの物理的なハミルトニアンの時間発展を制御することでシミュレートする手法の研究を進めている。 超伝導量子コンピュータでは、量子ゲートの実体であるマイクロ波パルスの物理パラメータを微分可能プログラミングで操作することによって、状態制御が可能になる。滑らかな(微分可能な)形状を持つマイクロ波パルスの振幅と時間幅を物理パラメータとして、その制御によって所望の状態を近似的に生成するプログラムの開発を進めており、その初期的な実装はほぼ完了している。現在は、このプログラムを多体スピン系と量子デバイスのハミルトニアンへと適用する研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題である「量子微分解析と状態制御を行うモデル」の構築に向け、ハイゼンベルク模型や1次元格子ゲージ理論など、より高度な多体スピン系のハミルトニアンによる時間発展を、量子デバイスの物理的なハミルトニアンの時間発展を制御することによってシミュレートする手法の研究をさらに進めていく。ある量子デバイスを対象とした時に、量子ビットの接続パターンや構造によってそのデバイスの物理的なハミルトニアンが決まる。そのハミルトニアン(デバイスハミルトニアン)に外部電場の大きさをパラメータとして持つ付加項を加え、この外部電場パラメータを制御することによって所望の状態を生成することが可能なモデルを実装する。このデバイスハミルトニアンによる時間発展によって、対象とする多体スピン系のハミルトニアン(モデルハミルトニアン)の時間発展をシミュレートする手法の開発を行う。デバイスとモデルの両ハミルトニアンによって記述されるユニタリー演算子の間のフィデリティーを計算し、そのフィデリティーを最大化するよう外場電場パラメータの最適化を微分可能な形で実装する。 NISQマシンに入力する外場電場として、超伝導量子コンピュータでは量子ゲート操作に用いるマイクロ波パルスを活用する。マイクロ波パルスの振幅と時間幅を物理パラメータとして、その制御によって所望の状態を近似的に生成するプログラムは初期的な実装がほぼ終わっており、このプログラムをさらに高度化し、多体スピン系と量子デバイスのハミルトニアンへと適用する。 超伝導量子コンピュータ以外のNISQマシンへの応用を可能にするため、外部電場の形状や特性を柔軟に変更できるプログラムへと拡張していく予定である。
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