Project/Area Number |
21K19944
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Musashino Academia Musicae (2023) Tokyo National University of Fine Arts and Music (2021-2022) |
Principal Investigator |
東田 範子 武蔵野音楽大学, 音楽学, 講師 (40904587)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 中央アジア / カザフスタン / 語りと音楽 / 音楽民族学 / 口承文芸 / 食と音楽 / 民族音楽学 / カザフ音楽 / 演奏の場 / 中央アジアの音楽 |
Outline of Research at the Start |
家庭に親戚や友人を招き、食事と会話を楽しみながら弦楽器ドンブラの演奏を披露し合うことは、カザフ人が日常的に行っている社会慣習である。この研究は、カザフの私的な会食オトゥルスでの音楽実践に焦点を当て、その全体像と特質を明らかにする。 カザフの伝統音楽は、曲にまつわる奏者の語りと音楽演奏がセットとして継承されてきたが、現在のコンサート形式の演奏では、語りは捨象され、演奏のみが披露される。一方、会食での演奏は、奏者の語りを伴って行われる。演奏の場で語るか否かという約束事は、なぜ場によって使い分けられるのか、現地調査とインタビューから考察し、カザフ社会における会食の文化的意義を炙り出す。
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Outline of Annual Research Achievements |
去年に引き続き、クイの各曲にまつわる語りを集めた書籍『先祖の言葉:クイの物語』の分析を進めている。クイの語りは、署名性のあるクイの場合と、作者がわかっていない伝承曲の場合とで根本的な違いがあることがわかった。前者の場合、当該のクイを作者がどのように作るに至ったかを後世の奏者が説明するというものが多く、作者の人間性や人生に大きく焦点が当たる内容になっている。一方、作者不詳のクイの場合は、クイが描写している情景や内容そのものが語りの中心となる。 前者は、少なくとも19世紀以降のカザフの音楽文化において、音楽の伝達が個々の作者像の伝達でもあったことを示しているといえる。カザフ人の氏族意識は今も強く、各地域の地元から出た過去の著名な音楽家たちに対して、現在の人々は、「自分と縁がある」という点で重視しているように思われる。クイの語りが浮き彫りにする作者像はこのような背景とも関わっているのではないか。 いずれの場合も、主題そのものは、暫定的に以下のように分類できる:動物、自然、人物、出来事、特に具体的な主題が示されていない思索、その他である。 語りの類型の分類方法としてアールネ・トンプソン法(AT分類)を参考にすることを考えていたが、現時点では、AT分類は本研究には適切ではないと判断している。上述のように、署名性を持つクイに関する語りの場合、作者の思いを奏者が二次的に説明する形になるため、単純に物語として(のみ)解釈するのは適切ではないと考えるに至った。そのため、現在のところ、特に確立した分類方法を使用するのではなく、クイの語りに特有のあり方から独自に分類することを模索している。 なお、23年6月に出版された『中央ユーラシア文化事典』に、中央アジアの遊牧民と定住民の音楽に関する項目を寄稿し、演奏における語りの重要性について触れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年4月から新しい業務が始まり、そのことに想像以上の時間と労力が費やされてしまったことから、昨年は、自身での研究以外に実績を出すことができなかった。また、複数の勤務場所の間で、長期休暇のタイミングをうまく測れず、現地調査を実現できなかった。本研究を一年間延長したので、今年度は研究結果のアウトプットを優先したい。
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Strategy for Future Research Activity |
ドンブラの楽曲クイの語りに関する口頭発表(東洋音楽学会)と論文投稿を年末までに行う。 国内の奏者によるレクチャーコンサートと、カザフスタンの奏者によるオンラインコンサートの開催を企画している。 8月には3週間程度の現地調査を予定している。
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