先端科学技術を対象とする熟議民主主義的な意思決定手法の倫理学的検討
Project/Area Number |
21K19947
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小林 知恵 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 特任教員(助教) (00907941)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 科学技術倫理 / 熟議民主主義 / RRI / デュアルユース |
Outline of Research at the Start |
先端科学技術に関わる社会的意思決定のあり方をめぐっては、専門家だけに閉じられた議論や評価システムに対する市民の不満を背景に、コンセンサス会議に代表される多様な利害関係者を意思決定の場に招き入れる民主的な手法の構築・試行がなされてきた。しかし、熟議民主主義的な構想に根差した意思決定手法について倫理学的な観点から十分な検討がなされているとは言い難い。本研究では、先端科学技術をめぐる熟議民主主義的な意思決定手法の開発に向けた倫理学研究として、熟議の場をデザインする際の基盤となる価値論の解明と、望ましい熟議が満たすべき要件の明確化を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先端科学技術をめぐる熟議民主主義的な意思決定手法の開発に向けた倫理学研究として、熟議の場を設計する際の基盤となる価値論と望ましい熟議が満たすべき要件の解明を目的とする。 2022年度は、(1)当該プロセスにおける倫理学者の役割と(2)ユーザーイノベーション分野(特にリードユーザー研究)の知見に注目して、責任ある研究・イノベーション(RRI)が支持する「一般市民や多様なステークホルダーの観点を取り入れた熟議的プロセス」の内実を解明する研究を実施した。(1)については、熟議の場において専門家に期待される「専門的知見の提供」という役割について、メタ倫理学上の道徳的証言をめぐる論争を参照し、自然科学等の専門家とは異なるモデルの必要性を明らかにした。(2)については、R. M. Stockらによるリードユーザーの動機(utilitarian user motives/hedonic user motives)がイノベーションの効用や新規性に与える影響に関する研究に基づき、先端科学技術をめぐる熟議の参加者が抱く動機とRRIの構成要素(主に包摂・省察性)の関係を分析した。その結果、このような動機に基づくアプローチが、RRI(特に包摂と省察性)の促進に資する場の設計に援用可能であるとの見通しを得られた一方で、搾取の回避など一定の倫理的考慮が求められることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先端科学技術のELSI/RRI研究を主題とするオンライン研究会を定期開催し、科学技術倫理を専門とする研究者と連携しながら研究を進展させることができた。また、所属研究機関内の他分野の研究者とRRIをテーマとする共同研究や地域実践に取り組む中で、本課題のアプローチを経営学や科学技術社会論の知見と接合する研究にも着手できた。 なお、本年度中に終了予定だった「考慮の不平等」に関する理論研究は、研究代表者が産休育休を取得したため、研究期間を延長して2023年度に引き続き実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
熟議の場において解消されるべき「考慮の不平等」について、主にM・フリッカーの「認識的不正義」(M. Fricker [2007] Epistemic Justice)をめぐる議論を参照することでその理論的基礎づけとその解消に向けて達成すべき要件の明確化を行う。さらにこの作業によって得られた知見自体を、熟議の参加者を含む関係者に共有されるべき情報の一部として位置付け、熟議の場を設計する際の議論にどのような配慮を呼び込むのか検討する。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)