ミゲル・アバンスールの批判的政治哲学:デモクラシーの核心としての「批判」概念
Project/Area Number |
21K20115
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0106:Political science and related fields
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
和田 昌也 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (30910088)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | アバンスール / 批判 / デモクラシー / 現代フランス政治思想 / 批判的政治哲学 |
Outline of Research at the Start |
現代フランス政治思想を代表するミゲル・アバンスール(1939-2017)の「批判的政治哲学」の考察を行う。その鍵は、1990年代から2000年代にかけての構想の過程の分析とその核心部に存する「批判」概念の解明である。アバンスールは最終的に「批判」と「デモクラシー」を節合し、自身のラディカル・デモクラシー理論へと発展させている。彼がなぜ「批判」に着目したのか、そしていかなる仕方でデモクラシーの理論へと練り上げていったかを多角的に検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の実績としては、カナダのヨーク大学にて開催された国際シンポジウム"The Politics of Emancipation: Utopia, Insurgent Democracy and the Legacy of Miguel Abensour"(2022年9月28-30日)にての口頭発表"Miguel Abensour's Concept of Critique as a Core of Democracy"が挙げられる。 この研究は、本研究課題の主題の位置づけとなるものである。具体的には、以下の二つの論点を詳らかにすることを目指した。まず第一に、ミゲル・アバンスールの晩年の批判的政治哲学の構想へと至る過程で基軸となってきたものとして彼の「批判」概念を同定し、その含意を明らかにすること、第二に、アバンスールがその概念を自身のラディカル・デモクラシーのモデルである「蜂起するデモクラシー」へといかに節合させたかに焦点をあて、その理論的関係を浮かび上がらせることを主たる狙いとした。 この二つの問題関心に照らせば、アバンスールが、1960年代にヘルベルト・マルクーゼの『エロス的文明』などの議論に接することで、批判理論との出会いを果たすことで、「批判」や「解放」といった視座を得ていくことになり、その後、エティエンヌ・ドゥ・ラ・ボエシの「自発的隷従」の議論に接近し、「支配の批判」の観点を強く打ち出すとともに、クロード・ルフォールの「野生のデモクラシー」の理論的限界を乗り越えるべく、自らのデモクラシー像を提示するに至っていることが重要な意味をもつものと解することができた。そして、それらの思想形成過程に通底するものとして「批判」概念を見出すことができることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗状況は、おおむね計画通り、順調に進展しているが、さきのアバンスールのシンポジウムの開催の遅れと相まって、研究発表の時期が少しずれこんできている。 しかし、本研究の核というべきアバンスールの「批判」概念の研究が順調に行えていることは確かである。また、その他の議論に関する研究の準備状況には遅れは生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の研究は、二つの方向性を考えている。 まず第一に、アバンスールの批判概念を、二十世紀後半、とりわけ今世紀初頭よりの批判に関する研究の隆盛のなかに位置づけることで、彼の議論の他との異同を明らかにする。 第二に、アバンスールのラディカル・デモクラシー論である「蜂起するデモクラシー」は、クロード・ルフォールやコルネリウス・カストリアディスらとの論争を通じて彫琢されてきたが、彼ら三者のデモクラシーのモデルとの比較検討を通じ、問われるべき論点を明らかにするとともに、アバンスールの議論の独自性を浮かび上がらせる。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)