Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
東京都心部の歴史ある木造密集地域、 谷中、向島などの路地や町家、屋敷等、歴史文化資源の保全や防災上の課題を、地域の実態と住民、自治体、事業者等のヒアリングを踏まえて検討する。あわせて、京都や金沢などの先進的な歴史都市の防災対策、神戸や熊本など旧市街地の震災復興を図る地区の取り組みや課題などを比較調査し、東京等の大都市部においても、歴史文化資源保全と防災対策を両立する地域まちづくりの可能性と、そのために必要な制度・事業等を検証する。
本研究の目的は、「歴史文化資源保全と防災対策を両立する地域まちづくり」を実現するための課題と有効な方策を明らかにすることである。大都市部の木造密集市街地や一般的な市街地において、路地や木造住宅・店舗などの歴史的文化資源を保全しつつ、防災 安全性の向上やコミュニティ育成を続ける方策について研究する。 木造密集地域は、一般的には防災上危険な地区として、道路拡幅や不燃化建替による防災安全性の向上が求められるが、本研究では、その環境を歴史的文化的資源として捉え、生活文化、コミュニティ、景観、生業の継承・発展、ひいては災害復興時の拠り所として、ハード・ソフト両面からの防災対策を行い、安全に保全活用していく方策を検証する。令和5年度は、文献調査により、各地の木造密集市街地における歴史的建造物や路地を生かすまちづくりに関する制度・事業、木造密集地域の防災性向上の両立を図る都市整備の状況、課題の確認を行った。京都では、木造の邸宅や庭園、寺院建築等の庭園に琵琶湖疏水を引き込み、泉水と防火用水を兼ねる岡崎地区の文化的景観、地形の高低差による水圧で防火用水を確保した本願寺水道、清水寺や伝統木造の続く産寧坂伝建地区を守る耐震型大規模貯水槽などの例を調査した。北国街道の城下町・小諸では、老舗の店舗や元脇本陣を修理補強の上、新たな店舗、旅館等として再整備する実例や計画を調査した。台東区谷中地区では、大規模貯水槽の整備、寺院境内における貯水槽、避難所整備、伝統的建造物の耐震補強や防火対策によるまち全体の防災安全性の向上の可能性について、谷中地区まちづくり協議会、台東区、関係機関等と検討・協議を行った。雑誌『都市問題』の特集「木密地域を問いなおす」において、台東区谷中地区の密集市街地における取り組みを分析し、共著『観光まちづくりの展望』において、谷中地区の古民家再生によるまちづくりを紹介した。
3: Progress in research has been slightly delayed.
令和5年度は、資料・文献等による調査・研究、を行ったが、コロナ禍の影響により、出張調査、現地ヒアリングを予定の範囲で実施することができなかった。
令和6年度は伝統的建造物群保存地区や木造の多い町の防災対策、震災・復興に備えた耐震・防火対策、貯水槽等の消防水利、避難所確保などの例を京都、金沢等の地区において、追加の現地調査やヒアリング、比較検討を実施していく。路地や伝統木造の続く地区の文化的特性、コミュニティの維持・醸成に果たす役割などの実態を、京都、金沢等の伝統的市街地、東京都区部の密集市街地などの街並み・空間構成の調査と自治体、地域団体へのヒアリング等を通して明らかにしていく。上記の結果をもとに、東京の密集市街地、特に上野公園・谷中地区等における歴史的環境と防災対策の両立方策について検討し、可能性を提示していく。
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都市問題
Volume: 114(5) Pages: 88-103
Volume: 114 Pages: 88-103