固有性喪失か多様性増大か?島と本土の頻繁な接続に伴う両生類の変遷過程を探る
Project/Area Number |
21K20678
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0703:Biology at organismal to population levels and anthropology, and related fields
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
江頭 幸士郎 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10738826)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 島嶼生物学 / 分子系統学 / 生物多様性 / 種分化 / 固有種 / 両生類 / 氷期₋間氷期サイクル / 生物地理学 |
Outline of Research at the Start |
島嶼の隔絶による生物の固有化と、本土との再接続・個体の移出入による共通化、あるいは本土からの大規模な移住による”上書き”でもたらされる固有性喪失は、島嶼の生物において普遍的に起こってきた進化的プロセスだと予想される。本研究では、九州島(本土)と五島列島(島嶼)に生息するタゴガエルについて、島嶼固有の遺伝系統と、本土と共通する系統それぞれの分布パターンや遺伝的分化・交流を調べることで、本土-島嶼の分断・再接続の繰り返しが、両生類の遺伝的多様性にどのような影響を与えてきたかを評価する。これにより、本土と近隣島嶼における生物の固有性・多様性の創出・喪失プロセスについて、その理論化と実証を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は現地野外調査と室内実験を行ったほか、成果の一部を学会で発表、論文で出版した。 前年度に実施した早春期の両生類調査に引き続き、当該年度は夏季の五島列島での現地野外調査を実施した。これにより、研究のために必要なサンプリングをほぼ完了することができた。また、室内での標本形態測定やDNAダイレクトシーケンスなど基礎的な遺伝学的実験により、調査地域の両生類の形態的・遺伝的多様性の概要を把握することができた。その結果、特に広域からサンプルが得られた両生類タゴガエルについて、古くに九州島集団から分派した五島ユニークな遺伝集団と、九州島とごく近しい共通祖先をもつ集団とが、モザイク状に分布していることが明らかになった。またそれら2集団は外部形態や繁殖フェノロジーにも違いがみられたことから、小島嶼に隔離された時間の長さに応じて、これら形質に淘汰圧がかかり独自の進化を遂げつつあることが窺える。このことは、本土(九州島)と頻繁に分離・接続する小島嶼(五島)の両生類において、波状に進化が進行することを示唆しており、島嶼生物学的に意義深い事象を実証できつつある。 いっぽう、これら集団のより詳細な進化史推定を目的としたゲノムワイドSNA多型解析については、当該年度終盤に次世代シーケンサーの出力結果が得られた段階であり、現在解析を進めているところである。 これら現状得られている成果については、当該年度中に2回の学会発表による成果公表を行ったほか、形態および基礎的な遺伝解析の結果を含む関連学術論文1遍を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では2021年度に実施予定であった野外調査1回分が、感染症拡大の影響で実施できなかったことを受け、2022年度にスライド実施している。この関係で、続く室内分子実験もやや遅れて進行している。ただし、遅れは生じたものの2022年度末時点はゲノムワイド多型解析の出力データは得られておることから、研究遂行に大きな問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
必要に応じ最低限の追加データ収集を行う可能性はあるが、基本的には2022年度末に出そろったゲノムワイド多型等のデータの解析を進めることに注力し、2023年度中に本研究課題の総括となる学術論文出版を目指す。出版に当たっては、オープンアクセス雑誌への投稿を積極的に検討する。関連して、学会発表等の成果公表の機会を設ける。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)