軟骨肉腫の悪性化機序の解明および新規治療ターゲットの検索
Project/Area Number |
21K20838
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0901:Oncology and related fields
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鍋島 央 九州大学, 大学病院, 助教 (90908683)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 軟骨肉腫 / エピゲノム / DNAメチル化 / がん治療 / 悪性骨軟部腫瘍 |
Outline of Research at the Start |
軟骨肉腫は、腫瘍性軟骨の形成を特徴とする悪性腫瘍である。化学療法・放射線治療に抵抗性で現在でも予後不良であるが、病態解明は進んでいない。 本研究ではエピゲノム異常に着目し、バイオインフォマティック手法を用いて網羅的に検索しターゲット因子の同定を行い、表現型の違う軟骨肉腫細胞株を用いることでin vitro, in vivoでの検証を行い、軟骨肉腫の悪性化メカニズムの解析および治療ターゲットとなり得る新しい因子を同定し、軟骨肉腫予後改善のための新規治療法の開発を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
脱分化軟骨肉腫(以下DDCS)は予後不良で外科的切除以外に有効な治療法がない悪性骨腫瘍であり、DDCSの悪性化機構の解明による新規治療法の開発が予後改善のために必要である。今回我々はDNAメチル化がDDCSの悪性化に果たす役割を調べ、エピゲノム異常が新規治療ターゲットとなり得るか検討した。 DNAメチル化によりDDCSと通常型軟骨肉腫(CCS)で発現低下する遺伝子をバイオインフォマティク手法を用いて網羅的に検索しターゲット因子の同定を行い、PRKCZという因子に着目した。DDCSの臨床サンプルでその発現を検証したところ、DNAメチル化によってPRKCZの発現は抑制されており、PRKCZの発現が低い群では予後不良であった。 次に複数の軟骨肉腫細胞株を用いてPRKCZの分子機能を検討した。レンチウイルスを用いてPRKCZを過剰に発現させると軟骨肉腫細胞株の細胞増殖を抑制し、アポトーシスが増加していた。また、XenograftマウスモデルにおいてもPRKCZ過剰発現株の増殖は抑制されていた。PRKCZはプロテインキナーゼの一つであり、プロテインキナーゼは下流のタンパク質をリン酸化させシグナル伝達を行うことで細胞の働きの調整を行っている。リン酸化キナーゼ抗体アレイを用いてリン酸化したタンパク質を網羅的に評価したところ、PRKCZはATMに直接結合して活性化し、CHK2のリン酸化とそれに続くアポトーシスを引き起こしていることがわかった。 また、DNAメチル化酵素阻害剤であるデシタビンの治療効果をin vitroおよびin vivoで評価した。デシタビンはPRKCZのプロモーター領域を脱メチル化することでPRKCZの発現を増加させ、ATM/CHK2経路を活性化し、アポトーシスを誘導して細胞増殖を抑制することが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね申請書の計画通りに研究は進んでおり、脱分化軟骨肉腫においてDNAメチル化の増加とPRKCZの発現低下はATM/CHK2経路の不活性化を介してアポトーシスを阻害することがわかった。また、デシタビンの投与によりPRKCZのプロモーター領域を脱メチル化することでPRKCZの発現を増加させ、ATM/CHK2経路を活性化し、アポトーシスを誘導して細胞増殖を抑制することが示された。以上の結果を論文として発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
軟骨肉腫においてはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1,2遺伝子の変異が高頻度で見られることが報告されている。IDH1,2遺伝子変異は広範な遺伝子メチル化を引き起こすことが知られており、軟骨肉腫における遺伝子のメチル化の原因の一つになっている可能性がある。しかしながら本研究で用いた軟骨肉腫細胞株にはIDH遺伝子変異を認めておらず、DNAメチル化の原因は不明である。IDH変異を伴わない高メチル化を示すDDCS症例が複数存在することが報告されていることからDDCSには未知の高メチル化メカニズムが存在する可能性があるため、その原因解明を行う。 また、デシタビンは非特異的なDNAメチル化酵素阻害剤であるためDNAのグローバルな脱メチル化を引き起こす。そのためPRKCZがどの程度悪性化に寄与しているのかということが不明である。この問題を解決するためにCRISPR-dCas9システムを用いてPRKCZのプロモーター領域を選択的に脱メチル化することを検討している。
|
Report
(2 results)
Research Products
(2 results)