Project/Area Number |
21K21344
|
Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Home-Returning Researcher Development Research)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Chemistry
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森本 裕也 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 理研白眉研究チームリーダー (60913572)
|
Project Period (FY) |
2022-02-18 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥53,820,000 (Direct Cost: ¥41,400,000、Indirect Cost: ¥12,420,000)
|
Keywords | アト秒電子ビーム / 超高速科学 / 電子ダイナミクス / 電子線回折 / アト秒科学 |
Outline of Research at the Start |
物質内で起こる超高速過程の研究、特にフェムト秒からサブフェムト秒の電子ダイナミクスの観測には、これまでレーザーパルスが主に用いられてきた。本研究では、アト秒時間幅の電子ビームを利用した新規ポンプ・プローブ計測法を開発することで、極限的な時間・空間分解能での電子ダイナミクスの可視化および荷電粒子の衝撃で開始される超高速反応過程の観測への道を拓く。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、アト秒域の極めて短い時間幅を有する電子ビームを利用した超高速イメージング手法の開発を行う。第二年次である2023年度は、第一年次に設計および製作したアト秒電子ビーム装置の立ち上げをまず行った。タングステン針を線源とする冷陰極電解放出型の電子銃に高電圧を印加し、フェムト秒レーザー光をタングステン針に照射することで、電子ビームの発生に成功した。また、第一年次に設計および製作を行った磁場レンズを試用し、電子ビームを適切に集束できることを確認した。電子ビーム装置の開発と並行して、第一年次に開発した波長3マイクロメートルの中赤外光源に続き、波長7-9マイクロメートルの広帯域中赤外光源の開発にも成功した。波長1マイクロメートルのフェムト秒パルスを励起光とする光パラメトリック増幅器を開発し、増幅用の非線型光学結晶にLiGaS2結晶を用いることで、出力20 mWの広帯域中赤外レーザー光を得ることに成功した。更に、次年度に用いる角度分解飛行時間型の電子エネルギー分析器の設計を実施した。軌道シミュレーションを繰り返し行う事で、0.1 eVのエネルギー分解能でエネルギーを分析可能な分析器の構造を得た。 本研究の大きな目標の一つであるアト秒電子回折法の実現のために重要な発見があった。アト秒電子ビームを用いた時間分解電子回折実験を行ったところ、従来の知見では説明できないほど大きな振幅で電子回折強度が変化した。理論計算と組み合わせることで、電子回折強度の変化は測定試料のダイナミクスではなく、電場誘起ロッキングカーブ効果と我々が名付けた、アト秒電子ビームの超高速ダイナミクスに由来することが判明した。ほぼすべてのアト秒電子回折実験ではこの電場誘起ロッキングカーブ効果を考慮した解析が必要となることも明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で計画している実験を行うための独自の実験装置の整備が概ね完了した。また、電場誘起ロッキングカーブ効果という、アト秒電子回折による物質中電子ダイナミクスの観測において考慮しなければならない効果を発見した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は当初の予定通り、サブフェムト秒電子分光の達成に向けた実験を実施する。そして、固体表面近傍で起こるアト秒の電子ダイナミクスに関する知見を得ることを目標とする。分光実験と並行して、アト秒電子回折実験を継続して行い、電場誘起ロッキングカーブ効果を考慮した解析によって、結晶性の試料にレーザー光が照射された際に起こる結晶内部の超高速電子ダイナミクスのサブフェムト秒・オングストローム分解能での可視化に挑む。
|