海域-陸域シームレス掘削試料を用いた東南極氷床融解ティッピング・ポイントの解明
Project/Area Number |
21KK0246
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (A))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 17:Earth and planetary science and related fields
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
菅沼 悠介 国立極地研究所, 先端研究推進系, 教授 (70431898)
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Project Period (FY) |
2022 – 2024
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥15,600,000 (Direct Cost: ¥12,000,000、Indirect Cost: ¥3,600,000)
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Keywords | 東南極氷床 / 周極深層水 / 海底堆積物 / 棚氷崩壊 / 放射性炭素年代測定 / 海水準変動 / シームレス堆積物掘削 / 氷床融解 |
Outline of Research at the Start |
近年,南極氷床融解の加速が相次いで報告され,近未来の急激な海水準上昇が強く懸念されている.海水準の将来予測には精密な氷床モデルシミュレーションが不可欠であるが,急激な棚氷崩壊や氷床融解メカニズムの理解は充分でなく,南極氷床融解の将来予測には不確実性が大きい.本課題では,海外の第一線の研究者との共同研究によって従来困難であった棚氷崩壊堆積物の解析と精密年代測定を実現することで,南極氷床沿岸における大規模な棚氷崩壊・氷床融解の要因とそのメカニズムを解明する.
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Outline of Annual Research Achievements |
近年,急激な棚氷崩壊と呼ぶべき現象(Marine Ice Sheet Instability: MICI)が引き金となる南極氷床の質量損失メカニズムが注目されている.しかし,MICIの実態は未だ不明であり,その発生条件だけでなく,その存在の有無についても議論が分かれている.一方,約2万年前の最終氷期以降におきた全球的な温暖化の際には,南極氷床も大きく質量を減じており,MICIが介した大規模な棚氷崩壊・氷床融解が起きた可能性がある.そこで本課題では,これまで西南極で多くの海底堆積物掘削を実施し,とくにロス海(ロス棚氷)において棚氷崩壊と考えられるイベントを報告したニュージーランドのMcKay博士とスペインのJimenz-Espejo博士,さらに昇温熱分解-放射性炭素年代測定法を用いて海底堆積物の精密な年代決定を可能とするアメリカのRosenheim博士との国際共同研究を実施する.そして,東南極のリュツォホルム湾とロス海で採取された海底堆積物の特徴や化学分析データを比較することで,棚氷崩壊の要因とMICIの影響について考察し,大規模な南極氷床質量損失メカニズムの解明を進める.2023年度は,とくにリュツォホルム湾の海底堆積物について,堆積構造のX線CT画像特徴と粒度,微化石群集と有孔虫の化学分析,ベリリウム同位体比等の分析結果と,放射性炭素年代結果を詳細に解析することで最終氷期以降の氷床棚氷の航海過程を復元し,Suganuma et al.,(2022)が報告したドロンイング・モードランドにおける最終氷期以降の氷床高度低下のきっかけとなるメカニズムの解析を進めた.さらにこの結果を国際共著論文としてまとめるべく,執筆を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年6-7月にスペインのグラナダ大学に,2023年11-12月にはニュージーランドのVictoria University of Wellingtonにそれぞれ約1ヶ月間滞在し,Jimenz-Espejo博士とMcKay博士との共同研究を進めた.本年は第64次の南極地域観測事業で新たに採取されたリュツォホルム湾の海底堆積物を対象とした.とくに,一次記載・分析によって見出された棚氷崩壊を示す可能性のある試料に注目し,堆積物のX線CT画像や粒度の特徴,微化石群集と有孔虫の炭素・酸素同位体およびベリリウム同位体データと,放射性炭素年代値を吟味し,氷床・棚氷後退のタイミング,規模,および面的な広がりを詳しく解析した.この結果から,リュツォホルム湾では約9000年前に棚氷崩壊がおきたと結論づけ,この現象が周極深層水流入による底面融解によるものなのか,またMICIのような急激な氷床崩壊まで伴うものだったのかを検証し,国際共著論文を執筆している.また,棚氷崩壊とその背後にある氷床融解の時間差を求めるために,リュツォホルム湾東方露岩域から採取された岩石試料の表面露出年代試料の精製と,米国の加速器質量分析施設での同位体測定を実施した.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,新たに共同研究者として追加したイギリス,ダラム大学のMike Bentley教授のもとと,2023年度と同様にニュージーランドのVictoria University of Wellingtonに滞在して,研究を進める予定である.とくに,昨年の海外滞在で取りまとめた急激な南極氷床融解プロセスの研究について,海水準変動の影響についての議論を進める.また,ニュージーランドでは,すでに大規模な棚氷崩壊が指摘されている西南極ロス海の海底堆積物に対して,その堆積物の特徴や微化石群集などのデータを取得する.また,新たにベリリウム同位体比測定を実施するための試料を分取し,滞在期間終了後に持ち帰り国内で測定を行う.その後,リュツォホルムとロス海で得られたデータとの比較を行い,各共同研究者と共有することで,棚氷・氷床後退復元のための指標の改良を進める.
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Non-destructive analysis and lithological descriptions of sediment cores from Lake Nurume, Langhovde in Lutzow-Holm Bay2022
Author(s)
3.Ishiwa, T., Tokuda, Y., Sasaki, S., Itaki, T., Suganuma, Y., Katsuki, K., Ikehara, Minoru,
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Journal Title
Polar Data Journal,
Volume: 6
Pages: 80-89
Related Report
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Synchronous Holocene ice sheet thinning across coastal Dronning Maud Land, East Antarctica2022
Author(s)
Suganuma, Y., Kaneda, H., Mas e Braga, M., Ishiwa, T., Koyama, T., Newall, J.C., Okuno, J., Obase, T., Saito, F., Rogozhina, I., Andersen, J.L., Kawamata, M., Hirabayashi, M., Lifton, N.A., Fredin, O., Harbor, J.M. Stroeven, A.P., Abe-Ouchi, A.,
Organizer
JPGU
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