Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
本申請では、蛋白質結晶によって形成される細孔表面をアミノ酸側鎖が規則正しく配列した特異な反応場と考え、この細孔表面への精密な金属イオン集積を利用した磁性材料合成法の確立を目的とする。特に、蛋白質単結晶X線構造解析によって金属イオン集積構造を決定し、その構造を基軸に、結晶系や反応条件の違いによって細孔空間への精密な金属イオン配置を原子レベルで実現し、機能創出につなげる。それらの条件を満たす蛋白質としてリゾチームを用い、異なる結晶化条件によって作成した3種類のリゾチーム結晶CoPt磁性ナノ粒子の作成を行った。正方晶、斜方晶、単斜晶の架橋化結晶(CL-HEWL)へ、Co、Ptイオンを集積させ、その後NaBHで還元することにより、CoPt粒子を作成した。次に、SQUIDを用いてこれらCoPt・CL-HEWLsの磁化測定を行った。5Kの低温においていずれの結晶を用いた場合でもヒステリシスをともなった強磁性挙動を示すことがわかった。その磁性ナノ粒子の磁気物性の1つである保磁力が3つの結晶系によって異なり、斜方晶で最も大きい値を示すことがわかった。リゾチームを含むバッファー溶液中で同様にCoPt粒子を作成してもこのような大きな保磁力は生じない。また、従来の球状やチューブ状蛋白質内部や外部表面でのCoPtナノ粒子の保磁力に比べても大きな値となり、蛋白質結晶の特異な細孔の空間効果によって、大きな保磁力が得られ、CoPtの磁気的性質が変化することが明らかとなった。従って、蛋白質結晶空間が金属材料の機能を制御する分子テンプレートとして有用であることが示された。
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