Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
ヒトを含む動物の非ふるえ熱産生は褐色脂肪組織(BAT)におけるUCP1の脱共役機能が担っている。BATでのUCP1活性は、脂質の分解により生じた遊離脂肪酸により賦活化される。一方、高等植物においても、高度に発熱機能を発達させた植物種が存在しており、例えば、ザゼンソウ(座禅草)は、氷点下を含む外気温の変動においても発熱により特定器官の温度を20℃内外に維持する能力を持つ。本研究においては、ザゼンソウにおいて見出されているUCP分子の構造上の特徴に着目し、炭水化物を基質とする呼吸においても、高いレベルの脱共役活性を発揮することができるUCP分子のデザインに挑む。本年度は、国内のザゼンソウ群落地にて発熱中のザゼンソウより肉穂花序をサンプリングし、細胞分画により得られた粗ミトコンドリア得ることを予定していたが、H23年3月に発生した東日本大震災の影響により、当該実験を予定通り行うことが困難な状況となった。研究室において保存されていた凍結ミトコンドリアも停電の影響で本来の活性が保持されているか確定できない状況となり、研究の遅延が生じた。このような状況の下、状態が良く保存されていたザゼンソウ由来ミトコンドリアをBlue-Native2次元電気泳動に供し、UCPを含むスポットについて、nano LC-MS/MSによりそのペプチド配列に関する情報を得る事ができた。このペプチド断片にはSrUCPbに特有の配列が含まれていた。さらに、ザゼンソウ葉からゲノムDNAを調製し、SrUCPsに関する遺伝子の増幅を試みた。その結果、SrUCPaおよびSrUCPbをコードすると予想されるゲノム領域を別々に増幅できる条件を得る事ができた。これらの増幅断片はおよそ20kbの長さを持ち、コード領域を含んでいる事から、ゲノム構造の解析が可能であると考えられた。