Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究の総成果は、マーク・ウィンチェスター「移民と先住民のあいだ」伊豫谷登士翁編『人の移動から場所「現代日本」をみる』(東京:有信堂高文社)として刊行決定となった。本研究の目的は、移民と先住民族との関係性を探究することによって、先住民族研究のこれまでの理論枠組みをどのように再構成できるのか、その具体的な場として戦前・戦後「日本」およびアイヌをめぐる近現代史をこの再構成した観点から捉え返すということである。「移民と先住民のあいだ」は、こうした意味で、さまざまな旅と移住の歴史を全面に出し、ディアスポラと第四世界における「先住民族性」というものの新たな概念化を目指しているジェームズ・クリフォードの議論を批判的に取り上げながら、「日本」という場からアイヌの詩人で活動家の森竹竹市(1902-1976)や荒井源次郎(1900-1991)のさまざまな移動によって形づけられた戦前・戦時・戦後経験を論じているものである。なお、12月の米国コーネル大学招待講演において研究代表者は近年のポストコロニアル研究との関連でアイヌ近現代史の報告を行い、高い評価を頂き、コーネル大学歴史学部教授のヴィクター・コシュマン氏、平野克弥氏、そしてビンハンプトン大学名誉教授マーク・セルデン各氏との研究打ち合わせを設けた結果、1950年代の移民とアイヌに関わる北海道史研究の論文の英語への翻訳依頼と、現在のアイヌ史をめぐる論考執筆依頼を頂いた。3月30日からの米国アジア研究協会(AAS)国際大会への出張において、パネル報告で研究代表者は都会に移民してきた若い世代のアイヌの活動家を中心に取り上げた発表を行い、今後同パネルの成果をさらに発展させ、研究代表者の共編となる米国アジア研究誌、positions : east asia cultures critiqueの特集号を組む準備が進んでいる。
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