Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
固型癌において、細胞障害性T細胞活性化を効果的に惹起するヘルパーT細胞の存在が必須であることは知られるが、新規のヘルパーT細胞サブセットであるTh17の抗腫瘍免疫における機能は明確でない。そこで申請者は難治性固型癌である肺癌細胞を移植するマウスモデルを確立し、Th17の抗腫瘍免疫における機能を明らかにすると共に、機能制御に関わる新たな遺伝子を見出すことを目指して本研究を開始した。まず肺癌細胞株TC-1及びLLCをC57BL/6マウス側腹部に移植する方法を用い、申請者は特異的な抗腫瘍免疫活性を有する細胞障害性CD8陽性T細胞を単離できるマウスモデルを確立することに成功した。またこのT細胞誘導過程における腫瘍微小環境において、IL-17を産生するTh17と考えられるヘルパーT細胞が誘導されてくることも申請者は見出した。次に腫瘍が移植された担癌マウスに上述の細胞傷害性T細胞を移植する系を用いて、腫瘍微小環境における免疫細胞動態の検討を行った。その結果、細胞傷害性T細胞の移植数に比例して抗腫瘍活性は高まるものの、Th17の割合は必ずしも増加しない可能性が考えられた。今後抗腫瘍活性が高い場合と低い場合のTh17における遺伝子発現を比較し、新規の機能制御遺伝子を同定する計画である。肺癌モデルより得られる遺伝子はTh17の抗腫瘍活性を積極的に抑制する機能を有する可能性が高いと考えており、この得られた遺伝子は将来的な免疫療法の標的分子となりうる。