Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
腎臓は中間中胚葉から派生することが知られ、その早期マーカーとしてosr1(Odd-skipped related 1)が同定されている。マウス胎生早期(7.5-8.5日胚)のOsr1発現細胞は腎臓系譜への多能性を持つが、後期(9.5日以降)には脈管系や尿管上皮、さらに間質、平滑筋への派生が制限される。これは、発生早期のOsr1発現細胞は腎臓系譜の多能性に関与する遺伝子を同時に発現しているが、発生の進行に伴って、それらの遺伝子が発現調節を受け分化能が制御されている可能性を示唆する。多能性幹細胞から腎臓系譜へのステップワイズなin vitro分化誘導法を確立するためには、より系譜多能性に寄与する特異的発現遺伝子および制御因子を同定することが必須である。本年度の研究において申請者は、発生時間軸に沿ったOsr1発現細胞の遺伝子発現プロファイルを作成し、それらを比較することによって、より腎臓系譜の多能性に寄与する特異的発現遺伝子の探索を試みた。具体的には、マウス胎生8.5日、9.5日、10.5日胚のホルマリン固定パラフィン切片からレーザーマイクロダイセクション法により中間中胚葉または後腎間葉領域を回収し、微量RNAの抽出・増幅を行い、マイクロアレイによって遺伝子発現解析を行った。その結果、胎生8.5日胚の中間中胚葉には、胎生9.5日、10.5日胚と比較し、それぞれ130個、157個の著明な遺伝子発現を認め、さらにその中の35個は共通して胎生8.5日胚の中間中胚葉に特異的である結果を得たものである。