Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本年度は、慢性蕁麻疹患者から得られた末梢血単核球(PBMC)における組織因子(TF)の発現を解析し、さらにLipopolysaccharide(LPS)および抗IgE抗体刺激下におけるPBMCにおけるTFの発現誘導に関して検討した。まず、健常人、慢性蕁麻疹患者とアトピー性皮膚炎患者から血液を採取し、単球、好酸球におけるTF発現をフローサイトメーターにて解析した。慢性蕁麻疹患者とアトピー性皮膚炎患者から採取した血球において、好酸球(CD294+)にTF発現を認めなかったが、単球(CD14+)でTFの発現を認めた。健常人では単球、好酸球共にTF発現は認められなかった。また、このような慢性蕁麻疹患者に見られる単球でのTF発現誘導機序を解析するために、健常人PBMCにLPSあるいは抗IgE抗体を添加して、PBMCに発現されるTFをquantitative PCRにて検出した。LPS添加後、時間経過と共にTF発現の増加が、すべての検体で確認された。抗IgE抗体の添加でも、一部の検体では抗IgE抗体刺激でTFの発現が検出された。さらに、この抗IgE抗体刺激によるTF発現は、LPSで共刺激することによりすべての検体で相乗的に増強された。これまで慢性蕁麻疹病変部でのTF発現細胞の存在は指摘されていたが、循環血液中での報告はない。TFは凝固開始因子で、TFが末梢血液細胞膜上に発現することは、血管内凝固・血栓形成の原因となりうるが、慢性蕁麻疹患者において血栓症の合併が多いという報告はなく、患者末梢血中ではTF発現と共になんらかの凝固抑制あるいは阻止因子が存在することが示唆される。また、IgE抗体とToll like receptorを介したTF発現機序は、蕁麻疹におけるIgEを介した肥満細胞活性化機序や感染症による蕁麻疹の増悪と関連がある可能性がある。
All 2010
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