Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
気分障害の病態には神経可塑性異常が想定され、そこには遺伝的要因と環境要因が関与している。本研究は環境要因(エピジェネティクス)の主役の1つであるヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)に注目し、我々が独自に確立した遺伝的素因としてストレス脆弱性を有するモデルマウスを用い、HDACsを介した遺伝子発現制御機構の異常とうつ病態との関連を、分子生物学的・生化学的・行動学的手法によって解析した。以下、本年度の研究成果を記す。1.ストレスに適応できたマウスの脳内でGDNFの発現量は増加していた。一方、ストレスに適応できなかったマウス(うつ状態のマウス)では、GDNFの量は低下していた。2.ストレスに弱いマウスの脳内でHDAC2の発現量は増加していた。また、HDAC2はGDNFプロモーター領域に結合していたことから、HDAC2を介したエピジェネティックなGDNF遺伝子転写抑制が認められた。3.ウイルスベクターを用いてHDAC2の機能を阻害したマウスは、ストレスに適応でき、GDNF発現量も変化しなかった。4.HDAC阻害剤(SAHA)に抗うつ効果があることを確認した。5.活性化型HDAC2を過剰発現させたマウスは慢性ストレスに適応できずにうつ様行動が増加していた。6.ストレスに強いマウスでは、CREBがGDNFの発現量を促進していることが示唆された。以上の結果から、HDAC2を介したGDNF遺伝子の発現制御機構の異常とうつ様行動との関連が示唆された。さらに、HDAC阻害剤(SAHA)に抗うつ効果を認めたことから、新規抗うつ薬の創薬につながる可能性が期待される。
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The Journal of Neuroscience
Volume: 30 Pages: 15007-15018
Brain Research
Volume: 1316 Pages: 43-50
Journal of Psychiatric Research
Volume: 44 Pages: 263-270
Volume: 44 Pages: 378-384
Neuron
Volume: (in press)
PNAS