Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
小児や青年に発病する早期発症型歯周炎の原因を自然免疫学的側面から解明するため、本研究は、Down症候群を疾患モデルとして、口腔上皮細胞および歯肉線維芽細胞の自然免疫応答について検討する。本年度は、細胞培養系の確立を目指し、研究実施計画に基づき、歯肉組織片を採取する対象となるDown症候群患者とコントロール群である健常者を抽出するため、年齢、歯肉炎および歯周炎の有無等、対象者の背景把握を目的とした事前プロトコールを検討、作成した。対象者の抽出は、すでに歯周炎に罹患した組織を除外することが重要になるため、プロトコールに基づき現在実施中である。また、口腔内には細菌から生体を守る抗菌ペプチドが常に存在しており、歯周組織を構成している口腔上皮細胞はこれらの抗菌ペプチドを産生し、炎症状態でその産生が増強することが知られている。本年度は、ヒト口腔扁平上皮癌細胞HSC-2を用いて、抗菌ペプチドの産生量を定量した。口腔内の炎症状態を想定して、IL-1α、TNF-αなどの炎症性サイトカインを加えて培養回収した上清中の抗菌ペプチドLL-37濃度を測定した結果、TNF-α刺激によって濃度が優位に上昇した。口腔上皮細胞は、粘膜自然免疫研究のモデルとして非常に優れているが、初代培養細胞の分離および継代が難しく、その中でもDown症候群の口腔上皮細胞は、特に分離培養が困難であるため、細胞培養系が確立することにより、初代培養細胞の免疫応答を検討することができ、学術的に有意義である。