Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
海洋溶存有機物は地球表層における最大級の還元型炭素プールを構成する。しかし、海洋溶存有機物プールの動態に関して良く理解されていない。有機物の挙動は有機物種によって異なる。従って、溶存有機物の全量に加え、その質的側面の時・空間分布を明らかにし、物理・化学・生物学パラメータと比較する事が海洋溶存有機物プールの現状・将来変動の理解に重要である。しかし、ハイスループットな溶存有機物の質的パラメータが存在しない。そこで本研究では、簡便・高感度な手法である紫外可視分光光度法を用い、それから得られるパラメータを溶存有機物中準易分解性成分の指標として確立する事を目的とした。帯域では植物プランクトンブルーム時に試料を採取した。採取した試料の紫外可視吸収スペクトルを測定し、有色溶存有機物(CDOM)の定量・定性評価を行った。測定したスペクトルを解析した結果、海洋表層に特有な表層特有CDOMを腐植様CDOMから分離する事ができた。表層特有CDOMの鉛直分布を明らかにした結果、亜熱帯、亜寒帯と海域を問わず、その濃度は深度と共に減少する事が分かった。一方、水深100mから300mにおける表層特有CDOM濃度は亜熱帯海域の方が亜寒帯海域より高い事が明らかとなった。両海域における水深100mから300mの水塊の年齢を考慮すると、表層特有CDOMは数10年程度、生物学的に難分解である事が示唆された。平成23年度に表層特有CDOMよりも易分解と考えられるタンパク質様蛍光の分布を明らかにした結果、水深100mから300mにおいて亜熱帯海域と亜寒帯海域で同様である事が明らかとなった。これらの結果から、表層特有CDOMは溶存有機物中準易分解性成分の指標として有用である事が考えられた。
All 2011
All Presentation (1 results)