Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
心機能障害を持つ患者に対し、幹細胞・前駆細胞療法は有望な治療方法である。現在主に臨床応用されているのは自己骨髄細胞であるが、われわれがごく最近報告した多能性ヒトMesoangioblasts(MAB)は末梢血中に存在し、骨髄細胞よりも高い増殖能、分化能を有していると考えられる。今回の研究の目的はこの細胞が末梢循環血中に動員されるメカニズムを解析し、末梢循環血中に動員されるきっかけとなりうる因子を同定し、この大きな可能性を秘めた細胞の臨床応用を少しでも容易なものにすることである。これまでの我々の検討ではhepatocyte growth factor (HGF)がMABの末梢血中への動員に強く関与していることが示唆されている。それでは、開心術中に患者血漿中でのHGFの増加に寄与した因子はなんであろうか?これまでの数多くの報告から人工心肺とヘパリン、そして一般的な外科的侵襲が考えられる。ヘパリンは静脈内投与後、約5分で血漿中HGF濃度を上昇させることが報告されている。そこでわれわれは本学の臨床研究倫理委員会の承認を得て、昨年秋からまず、人工心肺がcMABの動員に必須であるかどうかということから検討を始めた。方法として開心術を行う患者の(1)人工心肺装着前と(2)人工心肺離脱時のプロタミン投与直前の2つのタイミングで中心静脈から採血を行いcMABの獲得が可能かどうか検討した。結果、(1)、(2)の両方のタイミングでcMABを獲得できることが判明し(獲得率100%;症例数:7人)、cMABの末梢血中への動員に関与する因子として「ヘパリン→血漿中HGF濃度↑」が考えられた。この結果を受け、今後われわれはcMABの臨床応用をより可能性の高いものとするべく、「ヘパリンとcMABの末梢血中への動員との関連(交付申請書の研究計画の2番)」により重点をおいて次年度は研究を行う。
All 2011
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)
Eur Heart J
Volume: 32(5) Pages: 627-636