Research Abstract |
現代は,家庭や地域社会における直接的な触れ合いが少なくなり,希薄な人間関係の中で過ごすことが多い。つまり,自然的環境・社会的環境などの人間形成の基礎的過程(『「形成」過程』と呼ぶ)の消失により,人間形成のための貴重な体験や経験をすることなく生活している。そのため,保護者の規範意識が公共性を欠き,地域社会と一致しなくなり,子供の判断基準が曖昧になって規範意識が低下している。これは,規範意識の基となる道徳的行為に結びつく道徳性が育まれていないことと結びつく。 道徳の時間が「形成」過程の中心に位置づけられて連動することにより,破かな道徳的実践力が基盤となって道徳的実践ができる。道徳授業で学んだ内容を「形成」過程において試したり生かしたりすることによって,より確かな道徳的実践が可能となるのであり,そのような道徳的実践を繰り返すことによって,さらに道徳的実践力も強化される。希薄な「形成」過程に有機的なつながりをもたせ,道徳の時間と相互に連動し合うことにより,子ども自身が豊かな「形成」過程を取り戻し,規範意識だけでなくその基となる道徳性を育むことにつながる。つまり,道徳の時間を「形成」過程の中心に位置づけ,相互に連動し合う繰り返しのサイクルを回復させる道徳授業の開発が必要である。それは,子供一人一人が家庭や地域社会における直接的なつながりを実感し,人間としてよりよく生きるために必要な道徳的価値や行動の仕方を選択し,規範意識の基になる道徳性を確立していく授業である6以下に,その道徳授業開発の手順を示す。 1「形成」過程の認識 2道徳の内容に対応した「形成」過程の分類整理とその対応 3擬似の「形成」過程の創造 4擬似の「形成」過程と連動する道徳授業づくり 5道徳の時間のための「形成」過程を意識した事前事後活動の設定 6道徳学習単元カリキュラムの設定
|