Research Abstract |
血小板は止血・血栓の要であるとともに,多くの生理活性脂質を貯蔵・産生し活性化に伴って細胞外へ放出することで,種々の生体反応に関与している.我々は,血小板活性化によって起こるホスファチジルセリン(PS)の露出,それに伴うマイクロパーティクル(MP)の放出,さらにはこれらの現象に関わりの深いリゾリン脂質の役割を解明することを目指してきた.今回は本反応におけるスフィンゴシン-1-リン酸(sphingosine-1-phosphate:以下S1P)の関与に着目し,検討を行った. ・血小板由来S1Pの測定 健常人から採血により検体を得て洗浄血小板を作成し,刺激剤(コラーゲン)を用いて血小板活性化上清を採取した.この上清中のS1P放出量を,我々のグループが開発し(Yatomi et al. Annual. Biochem. 230:315-320, 1995),さらに改良したS1P測定法(オルトフタルアルデヒドによるプレカラム誘導体化・HPLC法)を用いて定量した。コラーゲン濃度の増加に伴って血小板凝集が認められ,S1P濃度が増加した. ・リンパ球細胞表面上のS1P受容体の発現 S1P受容体の発現の確認は,フローサイトメトリーを用いた細胞表面抗原解析により行った.リンパ球上のS1P_1受容体の発現を確認した. ・本反応におけるリゾリン脂質の関与の解明 S1P以外の血小板由来生理活性脂質(リン脂質・スフィンゴミエリン・リゾホスファチジルコリン・リゾホスファチジン酸:LPAなど)が及ぼす効果も併せて観察する目的で,すでに確立している測定系により,血小板活性化上清中の濃度を測定した.血小板活性化に伴いLPAの放出量は増加した.他の脂質と本反応との関連についてはさらなる検討が必要である. 今後は,血小板由来S1Pとリンパ球の相互作用の機序について,jurkat細胞やFTY720を用いてさらなる検討を進めていきたい.
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