Project/Area Number |
22H00004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 1:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
貝澤 哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北見 諭 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00298118)
鳥山 祐介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40466694)
北井 聡子 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (40848727)
杉浦 秀一 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 名誉教授 (50196713)
兎内 勇津流 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (50271672)
平松 潤奈 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60600814)
下里 俊行 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80262393)
坂庭 淳史 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80329044)
齋須 直人 名古屋外国語大学, 外国語学部, 講師 (80886292)
望月 哲男 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 名誉教授 (90166330)
金山 浩司 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (90713181)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥37,180,000 (Direct Cost: ¥28,600,000、Indirect Cost: ¥8,580,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,280,000 (Direct Cost: ¥5,600,000、Indirect Cost: ¥1,680,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,280,000 (Direct Cost: ¥5,600,000、Indirect Cost: ¥1,680,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,060,000 (Direct Cost: ¥6,200,000、Indirect Cost: ¥1,860,000)
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Keywords | ロシア思想史 / 宗教思想 / 科学思想 / 異他性 / ジェンダー・セクシュアリティ / 思想史 / ロシア / 生 / 身体 / 他者論 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、18世紀~21世紀の近現代ロシア思想史全体を、《異他性》の思考という従来な かった視点から再構築することを目指す。近現代ロシア思想史では、「他者」「差異」「不合理性」「非同一性」「複数性」「対話性」等、《異他性》にかかわる思考がつねに存在感を示してきた。こうした《異他性》の思考は、20世紀後半以降の西欧や日本の現代思想における「他者」「差異」「流動性」「多様性」「揺らぎ」などの重要な主題とも共通の問題圏を形成し、現在もそのアクチュアリティや有効性を失っていない。《異他性》の思考のこうしたあり方に焦点を当て、「多元性、多様性の思考の系譜」としてのロシア思想史の再構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、代表者、分担者による資料調査・研究と、その成果を総括し、全体的な課題の進展の確認のため、年2回の研究成果報告会・討議の機会を持ち、近現代ロシア思想における「異他性」の独自なあり方について、さまざまな時代の多様な角度から検討してきた。その結果、23年度には、近現代ロシア思想史に関する以下のような新たな観点や主題が明らかになった。 ①18世紀ロシアの啓蒙思想を、思想の国民化の観点から再検討する必要性。②19世紀のドストエフスキイとトルストイの文学における異他的なものと宗教思想との接点と相違点。③19世紀後半のロシア哲学思想における、「アフェクト」等の心理学的概念の再解釈の動きと、それに連動した論理学改革の流れの存在。④19世紀末のシェストフにおける無と無限の相関の問題とキルケゴールとの関連。⑤20世紀初期のイリインによる社会学な他者理解における、ジンメルと新カント派からの影響。⑥20世紀初期ロシア法哲学における新カント派の需要と自然法復活の議論との関連。⑦ソヴィエト初期の思想家ポグダーノフによる観念論批判と「宇宙主義」との結びつき。⑧ソヴィエト初期のバフチンの対話的他者論の形成にとって、新カント派哲学が演じた一定の役割。⑨ソヴィエト期における情報科学、とりわけサイバネティクスの独自の受容。 これらの観点・主題にはいずれも、ロシア・ソヴィエトの思想状況と西欧哲学思想との強い結びつきや、そのなかでナショナルな哲学・思想を確立しようとするアイデンティティ・ポリティクスが明確に現れていると感じられ、ロシア思想に流れる「異他性」の追求の背景に、西欧文化にたいする異他的なものとしての「ロシア思想」を探求する志向が明確に感じられるとともに、そうした思想の国民化に対する批判的な潮流もまた、「他者」思想の系譜として存在していたことが、徐々に明確になってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も2回の全体会合をおこない、各分担者による研究の進展と、新たな問題や論点の発見・提起が確認でき、今後の研究の展開に向けた方向性がさらに明確化したと言える。とりわけ、ロシア・ソヴィエトの思想状況と西欧哲学思想との強い結びつきや、そのなかでナショナルな哲学・思想を確立しようとするアイデンティティ・ポリティクスが明確に現れていることが感じられ、ロシア思想に流れる「異他性」の追求の背景に、西欧文化にたいする異他的なものとしての「ロシア思想」を探求する志向が明確になるとともに、そうした思想の国民化に対する批判的な潮流もまた、「他者」思想の系譜として存在していた点が明らかになってきたことによって、ロシア思想史を異他性の観点から再構成するためのパースペクティヴがかなり明確化したことは、本研究課題にとっては大変重要である。この意味で本年度の研究の進展はおおむね順調だったと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、今年度に獲得したいくつかの重要な視点をさらに深め、対象資料の読解・検討を進展させるとともに、新たな論点の発掘も続け、また、それらの論点や問題を綜合する思想史的パースペクティヴの構築を目指し、全体会合での討論と総括を重ねていきたい。 また例年通り、海外での資料調査、海外および国内学会での成果発表、内外の学術雑誌等への投稿も続けていく。 可能であれば、海外の専門家を招いて研究発表や意見交換を行って、研究の国際的連携も図っていく。 最終年度に向けて、成果論集の刊行を準備するため、論集の企画についても同時に進行していく。
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