Project/Area Number |
22H00012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 3:History, archaeology, museology, and related fields
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中村 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (40403480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 大樹 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員教授 (00612433)
田村 朋美 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (10570129)
正司 哲朗 奈良大学, 社会学部, 教授 (20423048)
久米 正吾 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員研究員 (30550777)
向井 佑介 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50452298)
諫早 直人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2025)
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Budget Amount *help |
¥42,380,000 (Direct Cost: ¥32,600,000、Indirect Cost: ¥9,780,000)
Fiscal Year 2025: ¥7,150,000 (Direct Cost: ¥5,500,000、Indirect Cost: ¥1,650,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,790,000 (Direct Cost: ¥8,300,000、Indirect Cost: ¥2,490,000)
Fiscal Year 2022: ¥15,080,000 (Direct Cost: ¥11,600,000、Indirect Cost: ¥3,480,000)
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Keywords | 草原地帯 / 青銅器-鉄器時代 / 戦車 / 騎馬 / モニュメント / 輸送動物 / モンゴル高原 / アファナシェヴォ文化 / ヘレクスル / 牽引動物 / 青銅器 |
Outline of Research at the Start |
大規模モニュメントは農耕社会の進展に伴って現れることが多いが、ユーラシア草原地帯でも青銅器時代から移動性牧畜民によって築造されるようになる。そこで、本研究は草原地帯のモニュメント築造展開及び社会変化に関して、動物利用による輸送能力向上が果たした役割を示し、非農耕社会の社会複雑化を構造的に解明することを目的とする。具体的には、移動性牧畜社会での大規模モニュメント築造の展開、輸送能力の成長過程、輸送・移動能力向上に伴う交易網の形成を、発掘を含む考古学的研究、動物考古学、ゲノム研究、青銅器の産地同定から検討を進める。最後にそれらの成果を統合し、牧畜及び遊牧社会における社会複雑化を追求したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、モンゴル高原の地理的環境と地域性の把握を目的として、青銅器時代のモニュメントの分布及び、それ以降のモニュメントの変遷に関する基礎的な分析を行った。まず、モンゴル高原で中核的地域とされる中西部のアルハンガイ県を中心に青銅器時代からウイグル時代までのモニュメント、土城の踏査を行った。この地域ではモンゴル高原のなかでは水量が多く豊かなオルホン川とタミル川を擁しており、古くは前3千年紀のアファナシェヴォ文化の墓、前2千年紀後半のサグサイ類型墓、前2千年紀末から墓と祭祀の複合モニュメントであるヘレクスルが分布することが知られている。踏査でもアファナシェヴォ文化とサグサイ類型のあいだの約千年間については、モニュメントを発見できなかった。 対照的に、この時期はアルタイ山脈東麓からハンガイ山脈にかけての地域で、モニュメント築造が盛んである。イェシン(2012)の研究ではカザフスタン東部だけでなく、アルタイ・サヤン地域のミヌシンスク盆地まで前2千年紀前半には、ウシが曳くワゴンが来ていることから、そうした地域でモニュメント築造が盛んになったことがわかる。その場合、アファナシェヴォ文化の段階に牽引動物が伴っていたのかが問題になるが、これは2024年度に予定している発掘調査を通じて解明したいと考えている。 一方、前2千年紀末からモンゴル中西部でヘレクスル築造が盛んになる背景について、当時の青銅器流通について検討を行った。この時期、ゴビ砂漠以南の長城地帯からサヤン・アルタイ地域のミヌシンスク盆地までの交流が盛んになる。ヘレクスルに伴う鹿石に描かれた青銅器図像の種類や大規模ヘレクスルの集中地域から考えて、モンゴル中西部が南北移動の主要ルートになっていたと推定された。つまり、この時期のヘレクスルの隆盛は南北交流に依拠したものであり、モンゴル高原に多い青銅原料が関係すると結論づけられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、日本再入国前に渡航先でPCR検査を受けなければならなかったが、概ねコロナ禍が終焉し、モンゴルで踏査と発掘調査を自由に行うことができた。そのため、前年度に準備してきた研究を概ね完遂することができ、以下のように多くの成果を上げることにつながった。 具体的には、踏査にてモンゴル高原の中心地を再確認し、その地域の隆盛が主として前二千年紀後半からであることを突き止めた。これには前述した青銅器流通と相関していることがわかり、有意義な知見を得ることができた。また、本年度はモンゴル中東部のKBS-BⅡヘレクスルを発掘し、その年代が前7~6世紀であることを明らかにした。このヘレクスルは中型で馬頭骨埋納用の石堆を20基以上もつものであるが、中西部のものと比べてかなり新しい。石で構築された大規模モニュメントは、ヘレクスル以降、みられなくなるので、これが下限に近い年代を示しているといえる。 ヘレクスルの末期、異なる墓制である板石墓が中部から東部にかけて広がるが、この際、板石墓はヘレクスルを破壊してその石材を使うことが多い。そのため、板石墓の場合、象徴的に四隅に立てられた立石とヘレクスルとは異なる板石の調達だけが必要となる。動物の使役による運搬の役割が減じたと推定されよう。このあたりで、動物の使い方が変わった可能性があり、今後はその追及が必要であることがわかった。 また、9月末にもモンゴル西部のアルタイ地域の踏査を行うことができた。この地域では岩絵に描かれるように、馬、牛をはじめとした牽引動物とワゴンが利用されていた。しかし、モンゴル中西部と比較して馬の供犠は少ない。アルタイ地域は、ヘレクスルをはじめとしたモニュメントの数量は多いものの、中西部と比較して一つのヘレクスルが大規模化したものはみられないため、地域ごとにヘレクスルの運用に差異があったことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降は、モンゴル中西部のなかでもヘレクスルが最も大規模化したハヌイ川流域の踏査を行い、その背景を検討したいと考えている。モンゴルでは基本的に河川に橋を架けないため、オルホン川やタミル川といった数量の多い大河川の渡河は苦労を伴う。現代でも、上流側の水量の少なくなった場所を渡るのが確実であり、河川沿いは交易ルートとなっていたと推定されるが、渡河の際には一旦、丘陵に入る必要がある。青銅器時代は移動性牧畜社会であり、ゲル(居住テント)の移動には、牛や馬が牽引するワゴンに載せる必要がある。そのため、渡河も水量の多い場所では難しい。2023年度以降はこうした地域の移動ルートとヘレクスルの関係を検討したいと考えている。 モンゴルの青銅器時代はモニュメントの概要的な変遷はようやく明らかになってきたが、地域性やヘレクスル自体の型式変化といった詳細は未だ十分な検討がなされていない。本研究では、牽引動物の実態を明らかにするとともに、各墓制の型式学的な変化についても明らかにしたいと考えている。これによって、放射性炭素年代に適した資料が出土しない墓でも、ある程度、年代を絞り込むことが可能になり、青銅器時代の盛衰をより正確に推定することが可能になると考えている。 また、モンゴルのワゴンの導入の実態を探るため、カザフスタンの踏査及び資料調査を行う予定である。ヘレクスルで顕著な頭骨埋納がどのようなルートできたかを検討することは、その風習と結びつく戦車利用のルート解明につながるからである。これとともに、牛が曳くワゴンについても、岩絵の踏査などを通じて検討を深めたい。
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