Project/Area Number |
22H00135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 15:Particle-, nuclear-, astro-physics, and related fields
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
都丸 隆行 国立天文台, 重力波プロジェクト, 教授 (80391712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 尚弘 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (00796237)
谷本 育律 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (60311130)
森脇 喜紀 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (90270470)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,510,000 (Direct Cost: ¥32,700,000、Indirect Cost: ¥9,810,000)
Fiscal Year 2024: ¥10,400,000 (Direct Cost: ¥8,000,000、Indirect Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,800,000 (Direct Cost: ¥6,000,000、Indirect Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2022: ¥14,690,000 (Direct Cost: ¥11,300,000、Indirect Cost: ¥3,390,000)
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Keywords | 重力波 / 較正 / 精密計測 / キャリブレーション / 光パワー / 重力場変調 / レーザーパワー / 重力場 |
Outline of Research at the Start |
重力波の信号は「地球と太陽の間で水素原子1個を探すようなもの」と言われるほど極めて小さく、検出器で計測した電気信号を重力波の大きさや位相に正しく変換するためには特殊な較正方法が必要となる。我々は本研究に先駆ける科研費研究でレーザーの光輻射圧を用いた重力波信号の較正装置を開発した。しかし、高い較正精度を得るためには更なる工夫が必要で、本研究では我々の考案した新しい重力場変調式較正装置を開発し、レーザー輻射圧式較正装置と相互較正を行う。また、レーザーパワー絶対値や検出器の時間変動などの不定性を徹底的に排除することで、最終的に高精度(振幅1%、位相1°)な重力波信号較正を実現する。
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Outline of Annual Research Achievements |
①干渉計応答の時間変動補正(東大宇宙線研・山本) :主干渉計伝達関数のリアルタイム補正プログラムは実装済みだが、実際のオプティカルゲインやアクチュエータ効率の変動補正ではハードウェア的に2つの干渉計アームの差動信号の安定性と感度が未だ不十分であるため、最大40%程度推定値が揺らいでしまう問題が残っている。KAGRAプロジェクトが能登半島沖地震でダメージを被ってしまったため、上記差動信号の安定化と低ノイズ化実現も先延ばしになってしまった。したがって、約40%の変動値推定精度向上は2024年度に持ち越しとなった。 ②PCALレーザーパワー絶対値不定性の検証(富山大・森脇) :2023年5月に実施した国際共同観測O4aにおいて、PCALレーザーパワー推定値の不確かさ0.7%、PCALの絶対較正値の不確かさ0.8%を達成し、本研究におけるPCAL精度の目標値はすでに達成できた。レーザーパワー絶対値の較正作業では積分球型光検出器の入射角依存性や非線形性を特定し、東大および富山大の学生の修士論文・卒業論文にまとめるなど学生教育にも貢献できた。LIGO-Virgoとの国際共同研究による光パワー絶対値の相互較正は現在海外グループにおいて実施中で、富山大では日本で相互較正を実施するための測定装置の自動化を進めた。 ③重力場変調式較正装置(GCAL)の開発(国立天文台・都丸、高エネ研・谷本) : 製作したGCAL部品の組み立てを実施し、GCAL 1号機はほぼ完成した。課題はローターに挿入するタングステン錘の重さ調整であり、加工が難しいことから方針を検討中である。また、GCALで発生する重力場変調信号を実験室で検証するためのセンサー開発も始めており、現在は捻れ振り子型センサーを開発中である。また、1号機の製作で分かった不具合の修正を進め、2号機の設計に反映させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費研究自身の進捗は概ね順調であるが、最終的にキャリブレーションシステムの統合運用を目指しているKAGRAプロジェクトは能登半島沖地震のダメージでスケジュールに影響が出ている。まず、KAGRAが予定していた第4期国際共同観測の第一フェーズ(O4a)には連星中性子星合体距離1.3Mpcの感度で予定通り1ヶ月ほど参加できた。この後、ハードウェアの修正、ノイズハンティング作業や主干渉計の安定化作業を続けてきたが、能登半島沖地震に見舞われ、深刻なダメージを受けてしまった。現在復旧を進めているもののスケジュールの見通しは立っていない状況である。このため、主干渉系応答関数のリアルタイム補正研究も足踏み状態にあるが、ソフトウェア等基本的なツールはすでに導入済みであるため、地震からの復旧作業終了後直ちに再開できる。 PCALの高精度化と運用は順調であり、すでに本科研費研究で目標とする精度は実現できた。LIGO-Virgo等との光パワー絶対値の相互較正も海外において検証実験が進んでおり、それが終わり次第富山大に検出器が送られる予定である。富山大では測定系の誤差を抑えるために自動で積分球型光検出器を入れ替えるシステムを構築し、試験を行っている。2024年度は富山大での検証が実現できる見込みである。 GCALの開発についても1号機の組み立てが終わり、おおよそ予定通りの進捗である。KAGRAのスケジュール遅れから、KAGRAへ実装した運用は科研費終了までに実現できない可能性があり、実験室での基本性能評価の検討を始めている。具体的には、捻れ振り子を用いたGCALの重力場変調信号の検証を検討している。また、1号機の課題を反映させた2号機の設計も進めており、2024年度には2号機も完成できる見込みである。 以上の通り、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
KAGRA全体のスケジュールは本科研費研究にも少なからず影響するため、まずはKAGRAの地震からの復旧を急ぐ必要がある。干渉計ハードウェアの安定化作業はまた一からやり直す必要があるが、これまでの経験を活かせるので比較的スムースに進められると考えている。干渉計の安定化により両アームの差動信号上でのPCALおよびコイルマグネットアクチュエーターの復調信号の積分時間を延ばすことができるので、オプティカルゲインおよびアクチュエータ効率の揺らぎを抑えることができると考えている。 PCALの光パワー絶対値評価は順調に進んでいるため、海外からの積分球型光検出器の到着を待って評価を進める予定である。この他、積分球の入射角依存性や経年変化など想定していなかった誤差が問題となる可能性もあるので、国際共同研究とは独立に積分球の評価を継続していく予定である。 GCALの開発では、実験室内で性能評価を実現できるように重力場変調信号を測定できるセンサーの開発を行う予定である。現在は捻り振り子を試験しているが、最近国立天文台においてRoberts Linkage(RL)と呼ばれる特殊な超低周波振り子の開発に成功したことから、RLをセンサーに応用することも検討する。また、現在のGCAL 1号機ではタングステン錘を装着していないため、錘の重さを0.1g程度に揃えたうえで装着することを目指す。最後に、1号機の経験を踏まえたうえで2号機の製作を行う予定である。 コロナなどのために国際共同観測のスケジュール自身が変更となり、本科研費研究終了までにO5が開始されない見込みとなったが、KAGRAのエンジニアリングラン等で、本研究による信号較正制度を実証していく計画である。
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