Project/Area Number |
22H00163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 17:Earth and planetary science and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
掛川 武 東北大学, 理学研究科, 教授 (60250669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 善博 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00544107)
石田 章純 東北大学, 理学研究科, 助教 (10633638)
三村 耕一 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80262848)
大藤 弘明 東北大学, 理学研究科, 教授 (80403864)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥43,420,000 (Direct Cost: ¥33,400,000、Indirect Cost: ¥10,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,880,000 (Direct Cost: ¥7,600,000、Indirect Cost: ¥2,280,000)
Fiscal Year 2023: ¥9,880,000 (Direct Cost: ¥7,600,000、Indirect Cost: ¥2,280,000)
Fiscal Year 2022: ¥23,660,000 (Direct Cost: ¥18,200,000、Indirect Cost: ¥5,460,000)
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Keywords | 初期地球 / ATP / リン / 隕石衝突 / 元素循環 / 還元状態 / 酸化状態 / ヌクレオチド / 衝撃実験 / アパタイト |
Outline of Research at the Start |
有機物が行う化学反応能力の中で最も重要なのがエネルギー蓄積・運搬能力であり、AT P(アノシン3リン酸)が担っている。前生物世界でATPを生成するためには岩石圏から リンを供給し、有機物と一体化させることが必要である。しかし初期地球におけるリンの 供給源や元素サイクル、化学的状態に関しては不明のままである。本研究では初期地球表 層環境中でリンが「特異的」元素循環を行い、その終着駅でATP形成したことを示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
現在と初期地球を含めた生物が行う化学反応能力の中で最も重要なのがエネルギー蓄積・運搬能力である。現生の生物の中では、その役割は生体分子でありリン酸化合物であるATP(アデノシン3リン酸)が担っている。初期地球の前生物世界においてATPをいかに生成するかは大きな論点であるが、その生成のためには岩石圏からリンを供給し、有機物と一体化させることが必要である。しかし初期地球におけるリンの供給源や元素サイクル、 化学的状態に関しては不明のままである。本研究では初期地球表層環境中でリンが「特異的」元素循環を行い、その終着駅においてATP形成したことを示す。そのために以下の4つの課題を設定し鉱物学・地球化学・合成有機化学を融合した研究を展開する。第1の課題の目的は、前生物世界での特異的リン元素サイクルの解明である。特に大陸のなかった初期地球では海底の玄武岩がリンの元素循環のスタートであったと仮説付けている。第2の課題では初期地球リン循環に対して隕石衝突の果たした役割を明らかにする。初期地球にあったリン酸が還元的リンに変わりうることや、衝突で特有のリン鉱物を形成しうることを示す。第3の課題の中で初期地球海水中に「リン酸」だけでなく「還元的リン」が存在していたのかを検証する。 さらに前生物的世界の堆積物内部リン再循環を通して、リン酸が特定条件の中でリボースや核酸塩基と反応し、AT P が生成された可能性を実験的に実証するのが第4の課題である。これら研究を介して「リン」というキーワードによって生命の起源に関する新しいシナリオを構築する。 本年度は、これらの目的遂行の中で得られた成果に対して国内、国際学会で発表を行った。その中には招待公演も含まれる。さらに複数の英語論文を出版できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記で説明した第1の課題において、前生物的ATP生成におけるリンの供給源を特定するために、特にオーストラリアピルバラ地域に産する34億年前のApex玄武岩とカナダアビティビ緑色岩帯の枕状溶岩に関する鉱物学的、地球化学的研究を行った。Apex玄武岩の研究では34億年前の海底熱水活動によって玄武岩からリンが溶脱されうることを地球化学的分析及び新たな熱力学計算によって示した(JPGU招待講演)。さらに27億年前の枕状溶岩の研究でも同様の結果が得られて、ホスト岩石の炭酸塩化とリンの溶脱がリンクしていることを熱力学計算でも示すことに成功した。これらは太古代の岩石であるが、前生物世界の海底現象のアナログと考えられ、初期地球では海底溶岩からのリンの溶脱が普遍的に起こっていた可能性を示す結果となった。初期地球リン循環に対して隕石衝突の果たした役割(第2の課題)を明らかにするために名古屋大学においてリン鉱物を用いた実験を行った。予想通り、水存在下の衝突環境ではアパタイトの溶脱が促進され、鉄とも反応し擬似シュライバーサイト形成を示す予兆が確認された。さらに衝突時における有機分子リン酸化実験にも成功した。第三の課題は第一の課題と同時並行で行われ、鉱物学的熱力学的研究によって局所的な海底熱水環境のみで還元的リンが存在しうることを示したが、還元的リンよりもむしろリン酸の重要性を示す結果が得られた。さらに前生物的世界の堆積物内部リン再循環系を実験室で作り出し擬似ATP(ヌクレオチド)やその類似物が生成されうることを実験的に実証 (第4の課題)し論文としてインパクトファクターの高い雑誌に出版した。さらに研究補助員を1名雇用し研究の効率化を測った。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の課題では昨年度、今年度と同様の太古代枕状溶岩の化学分析を継続する。それによってデータ数を増やし、現在、見出しつつある事象の普遍性を確認する。さらにその成果を論文化する。さらに38億年前の海底玄武岩や現生の枕状溶岩も分析対象に加える。同一試料を用いて第三の課題も実施する。この時に硫黄の存在が局所的に還元的なリンをアパタイトと結晶中に保持しうることを示す。第二の課題では条件を変化させ、多くの実験を行い、リンの化学種変化、それを引き起こす要因、全体での酸化還元状態のバランスなどを追跡する。第4の課題てでは反応系を複雑化する一方で、より初期地球の表層環境に近い状態で実験を行う予定である。
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