Project/Area Number |
22H00241
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 24:Aerospace engineering, marine and maritime engineering, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早稲田 卓爾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30376488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松沢 孝俊 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 海上技術安全研究所, 研究員 (00443242)
村山 英晶 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (10361502)
田村 岳史 国立極地研究所, 先端研究推進系, 准教授 (40451413)
巻 俊宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (50505451)
小平 翼 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (60795459)
平林 紳一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (90463877)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,510,000 (Direct Cost: ¥32,700,000、Indirect Cost: ¥9,810,000)
Fiscal Year 2024: ¥14,820,000 (Direct Cost: ¥11,400,000、Indirect Cost: ¥3,420,000)
Fiscal Year 2023: ¥12,090,000 (Direct Cost: ¥9,300,000、Indirect Cost: ¥2,790,000)
Fiscal Year 2022: ¥15,600,000 (Direct Cost: ¥12,000,000、Indirect Cost: ¥3,600,000)
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Keywords | 砕氷艦しらせ航行性能 / 波浪海氷相互作用 / IoT観測機器 / 氷海造波風洞水槽 / 定着氷成長・崩壊周期 / 海氷波浪相互作用 / 氷海水槽実験 / マージナルアイスゾーン / 氷盤フラクタル / 波浪方向スペクトル |
Outline of Research at the Start |
昭和基地極域観測の成否は、物資を運搬する砕氷艦「しらせ」が握る。リュツォ・ホルム湾定着氷の状況次第でしらせは数多くのラミング航行を強いられ、時には接岸断念に至る。しかし、定着氷の準周期的な成長・崩壊周期の解明がしらせの気候学的・戦略的・戦術的航路選択を可能にする。本研究では定着氷変動の鍵は外洋から侵入する波浪であるという仮説に基づき、定着氷のうねりによる崩壊機構、波浪緩衝帯である氷縁域流氷帯おける波浪海氷相互作用、氷海船舶推進性能の関係を明らかにする。氷海造波風洞水槽と数値水槽での基礎実験、南極海でのIoT観測機器による多点広域観測、海中ドローン計測、レーダー観測、航行性能モニタリングを行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「波浪緩衝帯である氷縁域・流氷帯そして定着氷における波浪海氷相互作用を解明し、定着氷の崩壊メカニズム、海氷下うねりの減衰散乱特性、氷況と船舶推進性能の関係を明らかにすること」である。そのために、1)氷海造波風洞水槽を開発し、海氷の形成と成長、崩壊における波浪・海氷・風相互作用と海氷下の波浪の伝搬・減衰(散乱/摩擦)過程を明らかにする実験を行い、2)実験水槽と対をなす数値水槽を開発し、力学的なプロセスを明らかにする。そして、南極昭和基地を擁するリュツォ・ホルム湾定着氷の準周期的な崩壊と成長の繰り返しを計測するために、3)IoT技術を駆使した波浪観測ブイを開発し、多点面的計測を行う。同時に、4)海中ドローン計測による海氷厚さ計測技術確立する。そして、5)多様な氷況下での船舶推進性能の評価を行う。観測は、南極地域観測(JARE)を中心に、北極海、オホーツク海における観測機会を利用する。 初年度に参加した第64次南極地域観測(JARE64)では、2022年12月に定着氷上に15基の波浪ブイを展開し、2023年4月の大崩壊(多年氷含む)を計測した。その前兆としての波浪の定着氷への侵入、そして、海氷の流出の計測を可能にしたのは、開発したIoT技術を駆使した波浪観測ブイである。またJARE64では、AUV MONACAをはじめて南極氷海域に展開した。 氷海造波風洞水槽では、造波をしながら製氷しグリースアイスと蓮葉氷を形成する技術を駆使し、海氷下での波浪の伝搬・減衰と非線形発達や、マイクロ波の散乱特性に関する新たな知見を得た。さらに、氷板の波浪による破壊実験を開始した。そして、蓮葉氷形成メカニズム解明につながる数値シミュレーションを行った。船舶推進性能評価のため、船体運動のGNSS計測、海氷機械特性の計測などを開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特筆すべき成果としては、本研究のゴールである定着氷の崩壊メカニズム解明につながる、2023年リュツォ・ホルム湾定着氷崩壊と大流出の、自作波浪ブイによる観測があげられる。翌年には新しく形成された定着氷が再び崩壊するが、流出の様子は前年とは異なることも分かった。今後、氷海造波水槽、数値水槽による基礎実験と併せ、そのメカニズム解明を行う。 1)氷海造波風洞水槽実験では、造波製氷(グリースアイスと蓮葉氷の形成)をベースに、マイクロ波レーダー散乱実験、海氷下波浪の伝搬に関する実験を行った。非線形波列の特異なダウンシフトは再現性のある頑強な結果である。対となる、2)数値水槽の開発では、流れ・熱・晶氷連成計算により波浪中蓮葉氷(晶氷群形成)形成を再現し、蓮葉氷の形成にはグリースアイスの可塑性が重要であることを示した。また、粒子法(SPH)を駆使した数値水槽では、数値減衰を劇的に低減することに成功した。そして、海氷の慣性と曲げ剛性を考慮した計算を実施し、不規則方向波の非線形伝達関数の導出を行った。 3)観測機器開発と観測では、極域における多点波浪計測のためにブイの開発を行い、漂流型波浪ブイを2022年度北極航海で展開し有義波高・周期の精度検証を行い、氷上設置型のブイをJARE64およびJARE65にて定着氷上に展開した。そして、JARE64では、4)AUV MONACAを氷海域に展開し、氷下でのナビゲーション手法の有効性を検証するとともに課題抽出を行った。 5)航行性能評価と支援については、砕氷船しらせの船体運動および構造応答を計測するために,GNSSとIMUを用いた計測システムを開発し、JARE65においてデータを取得し適用性の検証を行った。また、実海域での海氷の機械的特性計測を、北海道ウトロ港にて行った。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな試みと今後加速が期待される課題をまとめる:1)氷海造波風洞水槽実験:電磁波の散乱実験では、均一な氷、晶氷群、そして、表層の雪の影響も考慮した結果、体積散乱だけでなく、雪による表層からの散乱が確認できた。また、新たにプロピレングリコール溶液(模擬氷)による柱状氷の製氷試験、波浪による氷板の破壊実験を開始した。以上を繰り返し、実験精度を上げる。風洞の増設と氷海造波水槽でのプロピレングリコールまたは尿素水溶液による模型氷製氷が大きな課題である。そして、対になる、2)数値水槽の開発を継続する。流れ・海氷双方向結合モデルの構築が大きな目標である。数㎝~数mオーダーの現象については、新たに構築した粒子法によるグリースアイスレオロジーモデルの開発、粒子法波浪モデルの開発を継続する。数百m程度のオーダーの現象については、海氷下不規則方向波の非線形伝達関数の計算を継続する。 3)観測機器開発と観測:2023年、2024年とリュツォ・ホルム湾定着氷の崩壊が繰り返されたが、崩壊と流出の様子は大きく異なる。JARE66でも20数基の波浪ブイを定着氷上に展開し、継続して崩壊の様子をモニタリングする。同時にブイを検証データとして定着氷変形の衛星観測データからの推定を検討する。波浪ブイについては複数基間の無線通信や、風速センサの追加を検討し、海中ドローンによる海洋観測手法を開発を継続し、観測を実施する。 4)航行性能評価と支援:GNSSとカメラシステムによる砕氷性能モニタリングシステムの改良と可視化手法を開発・実装、海氷の機械的な特性を現場計測にて行う。また、JARE51次以降の観測データの解析を進め、過去の定着氷の成長・崩壊と砕氷航行の関係を明らかにする。
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