Project/Area Number |
22H00262
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 26:Materials engineering and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
乾 晴行 京都大学, 工学研究科, 教授 (30213135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 恭輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (20354178)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,510,000 (Direct Cost: ¥32,700,000、Indirect Cost: ¥9,810,000)
Fiscal Year 2024: ¥8,190,000 (Direct Cost: ¥6,300,000、Indirect Cost: ¥1,890,000)
Fiscal Year 2023: ¥9,880,000 (Direct Cost: ¥7,600,000、Indirect Cost: ¥2,280,000)
Fiscal Year 2022: ¥16,250,000 (Direct Cost: ¥12,500,000、Indirect Cost: ¥3,750,000)
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Keywords | 平均原子変位 / 固溶強化 / 降伏強度 / 熱活性化 / 転位 / 積層欠陥 / 動的摩擦抵抗 / 溶質原子 |
Outline of Research at the Start |
ハイエントロピー合金のような高濃度合金では,個々の構成元素の周りの歪場は隣接原子の配列の組み合わせにより多様に変化し,転位との相互作用の強さも原子スケールで変動するが,我々は最近その固溶体強度を,個々の構成元素の歪場及びその空間変動を正しく記述せずとも,構成元素の平均原子変位をパラメーターとして記述できる可能性を見出した.本研究ではハイエントロピー合金のみならず2元系,3元系の希薄および高濃度合金など種々の合金系につき,構成元素の平均原子変位と降伏せん断強度を極低温で求め,「せん断強度は歪んだ結晶格子から運動する転位が受ける動的摩擦抵抗により決定される」という新しい原理を検証する.
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Outline of Annual Research Achievements |
最近,我々のシンクロトロンX線回折を用いた研究から,4,5元系ハイエントロピー合金の強度が構成元素の平均原子変位と強い線形相関があることを見出した.この事実は,ハイエントロピー合金のような高濃度合金では,個々の構成元素の周りの歪場は,隣接原子の配列の組み合わせにより多様に変化し,転位との相互作用の強さも原子スケールで変動するが,その固溶体強度は個々の構成元素の歪場(原子変位)及びその空間変動を正しく記述せずとも,構成元素の平均原子変位をパラメーターとして記述できることを強く示唆する.ハイエントロピー合金のみならず2元系,3元系の希薄および高濃度合金など種々の合金系につき,構成元素の平均原子変位と降伏せん断強度を極低温で求め,「せん断強度は歪んだ結晶格子から運動する転位が受ける動的摩擦抵抗により決定される」という新しい原理を検証することにより,これまで記述が不可能だった高濃度合金を含めて,希薄合金から高濃度合金まですべての合金系の固溶強度を構成元素の平均原子変位を主たる新規なパラメーターとして定量記述する新たな理論体系の確立を目指した.基本的には完全にランダムな原子配列をもとに解析を進めているが,ある固溶体合金系では熱処理条件により構成元素の短範囲規則化が生じ,降伏強度を増大させるとされている.このような短範囲規則化に伴う強度上昇はランダム構造に比して強固な原子結合が生じるためと理論的に説明されているが,実験的には軟化が生じる場合もあり,その説明に疑義が生じる.構成元素の平均原子変位をパラメーターとして用いて短範囲規則化に伴う強度の増大・減少を説明し,強度に対し平均原子変位を主たる新規なパラメーターとして定量記述する新たな理論体系の確立を目指した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでのハイエントロピー合金に関する解析は多結晶で得られた力学特性データをもとに行われたが,本研究ではCr-Mn-Fe-Co-Ni系5,4,3元系ハイエントロピー合金に関しすべての単結晶について力学特性を測定し,固溶体強度と平均原子変位の相関関係を検証する.昨年度に5,4元系合金に関する基本的な調査を完了し,本年度は,5種の3元系ハイエントロピー合金単結晶を作製し,10~1473 Kの温度範囲で圧縮試験から降伏強度(CRSS)を測定し,第一原理計算から求めた平均原子変位との相関関係を検証した.5種の3元系ハイエントロピー合金単結晶ではCr濃度が増加するほど降伏強度は増大し,また,Co濃度が増加するほど降伏強度は減少した.平均原子変位の計算結果によれば,MnはCrに次いで原子半径が大きく,平均原子変位を大きくする元素であるが,Crと比べれば降伏強度の増大には大きな影響を及ぼさない事が明らかとなった.これらの傾向は平均原子変位の計算結果と一致しており,5種の3元系ハイエントロピー合金単結晶の0 K CRSSは平均原子変位と線形関係にあることが確かめられた.平均原子変位は格子ミスフィットの非線形相互作用をも含めてスカラー量で記述できる優れた金属固溶強化の定量記述子である事が明らかである.5,4,3元系ハイエントロピー合金単結晶の0 K CRSSも第一原理計算から求めた平均原子変位と線形な相関関係があり,しかもその線形関係は前述のすべてのハイエントロピー合金単結晶に対するものと全く同じ相関関係にあり,構成元素数に関係なしに0 K CRSSは1本のマスター直線で記述できる.
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Strategy for Future Research Activity |
等原子量ハイエントロピー合金に関し,初年度及び本年度で5,4,3元系合金に関する基本的な調査をすべて完了した.来年度(以降)は平均原子変位を第一原理計算から求める場合の磁性の影響を更に検証し,絶対零度でのCRSSを決定する要因の本質を追求する予定である 近年,合金の構成元素によっては熱処理により短範囲規則化が生じ,固溶体の強度も20 %以上の変化を見せるとの報告がある.CrCoNi等原子量合金につき,電気抵抗測定から明示される短範囲規則化とCRSSの関係について調査し,前述の報告とは大きく異なり,短範囲規則化はCRSSに大きな影響を及ぼさないとの結論を得た.しかし,第一原理計算では短範囲規則化が生じると平均原子変位が減少し,CRSSの減少が期待される.この矛盾につき,(1) CRSSは多数の転位の運動により短範囲規則が崩壊した後に測定される物性値である,(2) 短範囲規則化による原子配列の変化は転位が線張力に抗して折れ曲がる長さに比べて圧倒的に小さい,などの仮説を立てながら検証を続ける予定である.
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